関東を襲った台風15号の影響だろうか、北陸も午前中から気温が30度以上の真夏日になった。歩いているだけで熱中症になるのではないかと思ってしまうほど。金沢市で33度、能登半島の輪島市で32度と平年を5度上回る、厳しい残暑だった。
写真は正午ごろ、金沢市内の道路を走っていて、信号待ちで撮影した。積乱雲がまるでヨーロッパアルプスの最高峰、モンブランのように見えた。上昇気流の影響で鉛直方向へ発達し、雲頂が成層圏下部に達したかのような巨大な雲だった。神々しさと同時に不気味さも感じた。
積乱雲には気を付けたい。もう11年も前のことだが、「ダウンバースト」という現象が起きた。航空自衛隊がある石川県小松市。2008年7月27日午後3時半ごろ、突風が吹き荒れた。航空自衛隊小松基地が観測した最大風速は35㍍で、「強い台風」の分類だ。このため、神社の高さ4㍍の灯ろうが倒れたり、電柱が倒壊したり、民家70棟の窓ガラスが割れるなど被害が及んだ。このとき、小松基地が発表するのに使った言葉が「ダウンバースト」だった。積乱雲から急激に吹き降ろす下降気流。ダウンバースト、初めて聞いた言葉だった。
積乱雲の「ガストフロント」も怖い。ダウンバーストと同じ27日、福井県敦賀市や滋賀県彦根市でその現象は起きた。午後1時ごろ、最大瞬間風速21㍍余り。敦賀では「西の空が急に暗くなって雨が強くなって、突風がきた」。このため、イベントの大型テントが横倒しになった。福井地方気象台では突風の原因を「ガストフロント」と説明した。非常に発達した積乱雲が成熟期から衰退期かけて発生する雨と風の現象。小型の寒冷前線のようなものでその線に沿って突風が吹く。つまり、北陸に前線が停滞し積乱雲が発生、ガストフロント現象が起き、その前線となった金沢では豪雨が、小松、敦賀、彦根では風速21㍍から35㍍のダウンバーストが発生したのだ。
こうした嵐は想定外の規模でやってくる。日本だけではない。この年の5月に訪れたドイツで、シュバルツバルトの森が季節はずれの大嵐で1万㌶もの森がなぎ倒された現場をこの目で見た。地球環境学者のレスター・ブラウン氏は著書『プランB3.0』でこう述べている。「温暖化がもたらす脅威は何も海面の上昇だけではない。海面温度が上昇すれば、より多くのエネルギーが大気中に広がり、暴風雨の破壊力が増すことになる。破壊力を増した強力な暴風雨と海面の上昇が組み合わされば、大災害につながる恐れがある」と。レスター氏の警鐘が聞こえる。
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