トークンエコノミーという言葉を最近よく耳にする。英語で「token」はもともと「しるし」「象徴」と習った。それが「記念品」「証拠品」の意味になり、最近では硬貨の代わりに用いられる代用貨幣のこととして言葉が進化している。新しい経済概念として、トークンエコミーは「デジタル通貨による新しい経済圏」を指すようだ。今月20日に「能登SDGsラボ 第1回トークンエコノミーと奥能登国際芸術祭」という勉強会(講師:石田貢、大野沙和子の両氏)が石川県珠洲市であった。残念ながら参加はかなわなかったが、レジュメが手に入った。それをもとに自分なりに読み込んでみる。
トークンエコノミーはもともと心理学の世界で生まれたとされる。望ましい行動を取った場合に「トークン」が付与され、トークンを有形無形の価値と交換できるようにすることで特定の人やグループに対し望ましい行動を推奨するという考えだ。たとえば、消費税増税前の駆け込み需要を地域に取り込み、域内の経済活性化を図る目的で、行政が単独で発行する「プレミアム付き商品券」(1万円で1万2千円分など)もトークンの一種といえる。つまり、プレミアム付き商品券というトークンが外部に流出せず、域内で循環する仕組みとなる。
このトークンの仕組みを、ユーザーがスマートフォン上の電子ウォレット(財布アプリ)を利用することでさらに利便性が広がる。紙の地域商品券では、所有者に対して利用できる場所の情報を送付するといったコミュニケーションを取ることは難しいが、スマホだとユーザーに情報を送ることができ、継続的なコミュニケーションの接点となる。また、売れ筋商品の開発や事業展開など消費データを収集できるなど多面的な活用ができる。
ここで出てくるあらたなキーワードが「ブロックチェーン」だ。データのかたまり(ブロック)が連なっていく(チェーン)、これがブロックチェーンと呼ばれる。現在多くのネットユーザーは特定のサーバーにアクセスし、データのやり取りを行っている。ブロックチェーンは「ピアツーピア(Peer to Peer)」という通信方式でデータのやり取りを行う。ピアツーピアは、サーバー頼みの通信方式ではなく、ネットワークの参加者が個別、平等にデータのやり取りを行う方法のこと。
このブロックチェーンでトークンを発行することで、データの消失や改ざんといったリスクが軽減されるため、金融庁は新たな法的な枠組みづくりを検討している。今年度中に法案が成立の見込み。スペインのバルセロナでは、ブロックチェーンを基盤とした地域通貨「Rec」の発行を昨年2018年から実証実験の段階に入っている。1Recは1Euroに該当し、スマホで市内の店舗で利用すれば、特別な特典が受けることができ、域内での資金循環に寄与しているという。
勉強会では、トークンエコノミーを2020年秋に珠洲市で実施される奥能登芸術祭で特典が得られる参加券(電子チケット)の購入や国内外へのプロモーション活動、アートへの市民参加などに活用してはどうかとの提案が具体的にあった。プラン化が決まったわけではない。しかし、新しい概念を地域で分かりやすく説明し、トークンを使ってみたいという来場者の心をくすぐるイベントにしてほしいと願う。
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