自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆豊穣の海、国難の海

2017年11月08日 | ⇒トピック往来

   今月6日午前0時を期して日本海側でズワイガニ漁が解禁された。香箱(こうばこ)ガニと呼ばれるメスは来月12月29日まで、オスは来年3月20日までの漁期。きょう8日夕方、近所のスーパーマーケットに季節のものを求めに。こうなると不思議と足取りが軽く速くなる。魚介類の売り場に着くと同じ思いの人たちだろうか、茹でガニのコーナーをじっとのぞき込んでいた。見ているのは産地と値札である。私は迷いなく、能登半島の「蛸島(たこじま)産」のものを選んだ。

   これは蛸島漁港で水揚げされたズワイガニだ。同漁港は能登半島の先端部分にある。金沢から距離にして150㌔、能登沖で漁をする漁船の水揚げの拠点になっている。半島の先端で、水揚げして、陸路で金沢に搬送することになり、海路で金沢港に持ち込むより時間的に速く、その分鮮度が保たれるというわけだ。茹でガニのパックを手にしてレジへ。3980円。価格は去年とほとんど変わらず。旬のものなので確かに高価だ。少し値段が落ちる、来週まで待てるかというとそうでもない。もし時化(しけ)が続いて、漁そのものができなければ、値段どころか、口にも入らない。旬が買い時だ、毎年同じようなことを思って自分を納得させて高値づかみをしている。

    能登のズイワガニには能登の酒がマリアージュ(料理と酒の相性)と勝手に思い込んでいて、同漁港の近くの造り酒屋の「宗玄」と「赤大慶」を予め仕込んでおいた。ぴっちりと締まったカニの身には少々辛口の宗玄、カニ味噌(内臓)には風味がある赤大慶が私の口にはしっくりなじんだ。

    「豊穣の海」を感じる日本海だが、「国難の海」でもある。地元紙は連日のように、スルメイカの漁場・大和堆での北朝鮮漁船による違法操業について伝えている。大和堆は日本海のほぼ真ん中に位置し、もっとも浅いところで水深が200㍍。寒流と暖流が交わる海域でもありプランクトンの豊富な好漁場。日本のEEZ(排他的経済水域)であるにもかかわらず違法操業が続いている。

    北朝鮮の木造漁船はイカ網漁だが、集魚灯が装備されていない。日本のイカ釣り船団(中型イカ釣り船)がやってくると、そのそばに寄って来て網漁を行う。スクリューに網が絡まる事故を恐れる能登の船団などは、北海道沖の武蔵堆へ移動を余儀なくされている。これまでの報道では海上保安庁の取締船が8月までに延べ820隻に警告や散水して退去させたが、今も数百隻が居座り続けているようだ。

    石川県漁協では国への陳情を続け、臨検や拿捕(だほ)といった厳しい取り締まりを要望しているが、違法状態は続いている。弾道ミサイルを日本海に続けさまに撃ち込んでいる北朝鮮の情勢を推し測ると、これ以上の関わりを保安庁としては持ちたくないのだろうか。安倍政権は国難の打破を掲げて、衆院選を断行し再び政権の座に就いた。その公約を日本海で実装してほしい。

⇒8日(水)夜・金沢の天気    はれ

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