自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「地方重視の外務大臣」

2017年06月05日 | ⇒トピック往来
   外務省が主催する「地方を世界へ」プロジェクトが今月3、4日の両日、金沢市で開催された。このプロジェクトは地方の魅力をグローバルに発信する新たな取り組みで、外務大臣とと駐日外交団が地方を訪れて、文化や産業を見聞することで、地方の魅力を世界に発信すると同時に地域の活性化を目指すものも。岸田大臣は駐日外交団(8ヵ国=ベネズエラ、ニカラグア、デンマーク、ニュージーランド、フィンランド、キューバ、オーストラリア、韓国)を伴って、金沢の日本酒や金箔のメーカーを訪れ、さらに同時に開催された金沢百万石まつりの時代行列などを見学した。

   一行が到着した3日午前中、国連安保理で北朝鮮に対する経済制裁を拡大する決議が全会一致で採択されたことを受けて、JR金沢駅で臨時の記者会見が設定された。以下、外務省のホームページから抜粋する。岸田大臣は今回の安保理の制裁決議をこう評価した。「今回の決議については、資産凍結、あるいは入国・入域の禁止、こうした対象を追加する、こうした内容のものです。国連安保理において、中国、ロシアをはじめ安保理の理事国全員で一致をし採択をした、このことの意味は大きい。国際社会が一致して、北朝鮮に対して強い内容を含む決議を採択することによって意思を示ししたという意味で重要であると認識をします」と。

   4日午前中、金沢大学十全講堂(金沢市宝町)で「北陸・石川県の魅力を世界に発信」と題してシンポジウムが開催され、その後に記者会見が開かれた。ここで地元の記者からリアリティのある質問が飛ぶ。

   「【記者】 北朝鮮のことについてなんですが、今回,宇出津事件から40年ということで言及もありましたが、今なお石川県では漁師の方がEEZの近くで操業されるとかということもあって、北朝鮮の脅威にさらされる土地柄でもあるんですが、こちらについての対応といいますか、対策、思いということをお聞かせいただけますでしょうか。」
   「【岸田外務大臣】 まず、石川県と拉致問題との関係で申し上げるならば、講演の中でも申し上げさせていただきましたが、久米裕さん当時52歳でいらっしゃいましたが、昭和52年(1977)9月19日に石川県宇出津(うしつ)海岸付近において北朝鮮の工作員によって拉致されました。政府としては北朝鮮に対し、久米さんの一刻も早い帰国、これを強く求めてきましたが、北朝鮮はこれまで久米さんの入境、要は、北朝鮮の国内に入ったということを認めていない。これが現状であります。捜査当局は、平成15年1月、主犯格である北朝鮮工作員・金世鎬(キム・セホ)の国際手配を行っており、政府としては、北朝鮮に対して、この同人の身柄の引渡しを求めているところです。久米さんの拉致から40年経ちました。これは一刻の猶予も許されない問題であると認識をしています。政府としては、対話と圧力、行動対行動の原則の下に、ストックホルム合意の履行を求めながら、久米さんを含む全ての拉致被害者の一日も早い帰国、これを実現するべく、全力で取り組んでいかなければならない。国の責任でそれを実現しなければならない。こういったことを強く感じています。」

    北朝鮮による久米裕さんの拉致は「拉致1号事件」とも呼ばれる。拉致問題が外交の最重要課題であり、シンポジウムの講演で、岸田大臣は当地と関連ある拉致1号事件にあえて触れたのだろう。記者会見での返答ぶりや自らが各国の大使クラスを連れて地域を訪問する様子はこれまでの外務大臣の印象と明らかに異なる。「地方重視の外務大臣」と評価してよいのではないか。(※写真・上は金沢市内の金箔メーカで、写真・下は外務省主催のシンポジウムで講演する岸田大臣。外務省ホームページより)

⇒5日(月)午後・金沢の天気  はれ
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