自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ネット同時配信の成功モデルはラジオにある

2017年02月26日 | ⇒メディア時評
   先日(今月23日)広告代理店「電通」が「2016年 日本の広告費」を発表した。毎年このデータに注目している。それによると、2016年の総広告費は6兆2880億円で前年比101.9%と5年連続でプラスとなった。注目しているのは、通称「4マス」と呼ばれるマスコミ4媒体の広告費だ。テレビメディア(地上波、衛星)の広告費は2兆8596億円(前年比101.7%増)、新聞は5431億円(同95.6%)、雑誌は2223億円(同91.0%)だった。これに対して、ラジオは1285億円(102.5%)。インターネットはさらに伸び率が高く1兆3100億円(同113.0%)だった。

   4マスでの伸び率で言えばラジオが健闘した。これまでだと、ラジオが伸ることはありえなかったかもしれない。ところが、電通の分析はこうだ。ラジオの伸びは年間を通して好調に推移していて、業種別ではシェアの高い「外食・各種サービス」が同110.5%と2桁成長し、11年連続で増加した。そのほか「不動産・住宅設備」「自動車・関連品」なども増加している。とくに、「radiko(ラジコ)」は月間ユニークユーザ-数およびプレミアム会員数が前年に引き続き堅調に推移。また、リアルタイム以外でもラジオ番組が聴けるタイムフリーサービスがスタート(2016年10月)し、利用が促進された、としている。このラジコこそ、ラジオのネット同時配信なのだ。

   ラジコは2010年に、関東と関西のラジオ放送局、そして電通が共同で立ち上げた。全国82のラジオ局と放送大学が参加し、リスナーは今いる地域の放送局の番組は無料で聴ける仕組みだ。2014年からは月350円(税別)で全国のラジオ放送が、昨年2016年10月からは地元のラジオ局の1週間分の番組が無料で聴けるようになった。

   この仕組みをテレビ局でも応用できないだろうか。テレビ局のネット同時配信は東京キー局の番組が全国に配信できるようになれば、ローカル局が「炭焼き小屋」になりかねない、経営危機に陥るという懸念がテレビ業界、特にローカル局にある。が、ラジオもテレビも同じ構図だった。ラジコのシステムと同じように、月額料金を払えば他のテレビ局も視聴できるようにすれば、視聴者に選択肢が広がる。関東圏や関西圏の視聴者のローカル局の視聴ニーズが高いとされている。さらに、スポンサーとすればテレビ局の新たな広告価値も広がるのではないだろうか。

   現状では、ネット上でさまざまな動画サイトが乱立し、テレビ局は視聴者を奪われつつある。これが一番の危機と認識して、テレビ局はネット同時配信を急ぐべきではないだろうか。もちろん、肖像権や音楽著作権など乗り越えるべき壁はあるが、勢いで取り組めばそう難しい話ではない。

⇒26日(日)夜・金沢の天気    あめ
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