自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★2016 ミサ・ソレニムス~上

2016年12月25日 | ⇒ドキュメント回廊
  先の休日(天皇誕生日、23日)はちょっと優雅な一日だった。「宇野さん、いっしょに茶杓(ちゃしゃく)をつくりませんか」と誘ってくれた友人がいて、この日の午前中、茶杓づくりに初めて挑戦した。茶杓は茶道で使い、棗(なつめ)など茶器に入った抹茶を茶杓ですくって茶碗に入れる。還暦を過ぎてお茶を習い始めたと知った友人が竹細工のプロを紹介してくれたのだ。30年間乾燥させた竹をひたすら小刀で削って、サンドペーパーで磨く、最後に半ば乾燥した椋(ムクノキ)の葉で全体を磨く。3時間ほどかけて仕上げた。竹細工をしたのは、子どものころ竹とんぼをつくって以来だろうか。

  午後は石川県立音楽堂での「荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)」のコンサートに聴き入った。県内では、すっかり年末の恒例のイベントとして定着し、ことしで54回目。ことしはイタリアからソリスト(メゾソプラノ)を招き、例年になく雰囲気が盛り上がった感じだった。「キリエ (Kyrie)憐れみの讃歌」、「グロリア (Gloria)栄光の讃歌」、「クレド (Credo)信仰宣言」、「サンクトゥス (Sanctus)感謝の讃歌」、「アニュス・デイ (Agnus Dei)平和の讃歌」と演奏は進み、聴いているうちに高揚感が湧いてくる。茶杓づくりで味わった一点集中の充実感との相乗効果か、爽快感に満ちた一日だった。余勢を駆って、このブログでも年末恒例となった「ミサ・ソレニムス」と題して、この1年を回顧したい。

戦後71年「負の遺産」の清算、その現実はどうか

あす26日、安倍総理はハワイのパールハーバー(真珠湾)をオバマ大統領と訪れ慰霊する。このニュースに接した多くの日本人は、5月に被爆地・広島を訪れたオバマ氏への返礼の訪問と感じたのではないだろうか。オバマ氏とともに犠牲者を慰霊し、これが最後となる首脳会談も行うという。総理は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという未来に向けた決意を示したい」と首相官邸で記者団に語っていた。謝罪ではなく、あくまでも未来志向なのだ。

  今月16日、総理とロシアのプーチン大統領との総理公邸での共同記者の様子をじっとテレビを通して見つめていた。北方四島での「共同経済活動」に耳目を傾けた。2人の首脳はそれぞれ、関係省庁に漁業、海面養殖、観光、医療、環境などの分野で協議を始めるよう指示し、実現に向け合意したと述べた。この「共同経済活動」が「平和条約締結」に向けた重要な一歩になると、安倍氏、プーチン氏それぞれが強調した。ロシアが実効支配している北方四島に共同経済活動を足がかりに日本が手をかけた、つまりフックをかけたということだろう。これまで手出しすらできなかった四島に影響を拡大できる可能性を手にしたようだ。

  ここで総理のことしの外交の特徴が一つ浮かんでくる。戦後71年目の「負の清算」だ。真珠湾攻撃、原爆投下、北方四島…。この重い負の歴史遺産をオバマ、プーチンの両氏を巻き込んで、未来志向へと転化したいとの思いがにじむ。ただ、現実はどうか。

  今月23日の国連総会の本会議で、核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」について、来年3月から交渉を始めるとの決議が賛成多数で採択された。核保有国のアメリカやロシアは反対。それに被爆国である日本も反対したのだ。核兵器の非人道性を訴える非保有国のリーダーとなるべきは日本ではないのだろうか。それが、なぜ反対なのか。アメリカの「核の傘」に入っている気がねがあるのならば、せめて棄権ではないのか。その説明が聴きたいものだ。

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