自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★中国の爆発と記者会見

2015年08月14日 | ⇒メディア時評
   中国・天津市で、13日未明に起きた大規模な爆発は日本のテレビでも大々的に報道されている。すさまじい爆破だったと察する。報じられた気象衛星「ひまわり8号」の撮影による地球上空の画像でも、天津の爆発がはっきり見えている。現場から500㍍離れた地点で、24時間余りたった今も、黒煙が上がっている。

   こうした事故の様子、たとえば死者や負傷者の数は日本の場合、消防当局がその都度記者会見して発表する。中国でもこの天津の爆発に関して13日午後に会見した、と日本のテレビが伝えている。それによると、これまでに44人が死亡し、けが人は521人にのぼっているとの発表だった。爆風で広範囲のマンションなどに被害が出ていて、住民3500人ほどが避難しているという。

   注目したのは44人の死者の内訳だった。44人の死亡者のうち、12人が消防士という。消防士は爆発の後に現場にやってきて、消火や救助活動に当たる。そうした消防士の12人が亡くなったということは、住民の被害は相当に大きいと想像する。2001年9月11日のニューヨーク市での同時多発テロでの犠牲者3025人のうち、消防士は343人といわれている。災害現場に入る救助活動のプロでもこれだけの命を落としている。救助側の犠牲が大きいということは、住民側の犠牲者もまた相当に大きいと察する。

   問題は会見の発表内容だ。当局はどんな化学物質が爆発現場の倉庫に保管してあり、爆発したのかは明らかにせず、会見は打ち切られたという。そして、防護服を着た消防隊が、砂の混じった消火剤をまくなどして、対応にあたっていることだ。つまり、化学物質が特定できないので、消火の対応に決め手がなく、とりあえず砂をまいているという風にも解釈できる。これが日本で起きた事故だったら、メディアは「場渡り的な対応」と消防当局に批難を集中させるだろう。

   願うのは、被害の大きさ(死者や負傷者数、家屋の倒壊数など)の事故原因を解明してほしいということだ。2011年7月に起きた中国・温州市での鉄道衝突脱線事故では死者40人(中国政府発表)とされたものの、事故原因の徹底究明がなされないまま、車両が現場の高架下に埋められたとの一件が記憶に生々しい。今回の爆発事故では、記者会見を一回限りで打ち切ることなく、その都度開催して事故の真相を明らかにしてほしいと願う。当局のそうした真摯な態度が、中国への信頼を回復させるきっかけとなると考えるからだ。

⇒14日(金)朝・金沢の天気   あめ
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