自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「ミクロ」の輝き4

2011年10月16日 | ⇒ドキュメント回廊
 よく手入れされた山が能登半島にある。中でも、能登町宮地・鮭尾地区はキノコが採れる山で知られる。この山を生かして、いろいろな体験ができる=写真=。山菜採り体験、ツリーハウス作り体験、炭焼き体験など都会ではできないコンテンツだ。能登町の農家民宿群「春蘭(しゅんらん)の里」。いまこの集落が注目されている。

       英・BBC放送に挑戦した「春蘭の里 持続可能な田舎のコミュニティ」

 地域おこしを目指す草の根活動を表彰するイギリス・BBC放送の番組「ワールドチャレンジ」。世界中から600以上のプロジェクトの応募があり、「春蘭の里」が最終選考(12組)に残った。題して「春蘭の里 持続可能な田舎のコミュニティ~日本~」。日本の団体が最終選考に残ったのは初めてという。BBCでは現在、12組の取り組みを放映中で、内容は特設サイトでも見られる。投票は同サイトで11月11日まで受け付け、結果は12月に放送される予定。最優秀賞(1組)には賞金2万ドル、優秀賞には1万ドルが贈られる。最優秀賞をかけたインターネット投票を実施中で、地元は「能登の魅力を世界に発信するチャンス。ぜひ投票して欲しい」と訴えている。 

 能登町はことし2月の国勢調査の速報値でも、前回(5年前)調査に比べ人口が10%現象するなど過疎化が起きている。そこで、同町のDさん(63)ら有志が住民が実行委員会を設立し、「春蘭の里」づくりを始めた。1996年のことだ。春蘭の里のキャッチフレーズは「何にもない春蘭の里へようこそ」だが、30の農家民宿がそれぞれ「1日1組」限定で宿泊客を迎え、囲炉裏を囲んだ夕食でもてなす。くだんの炭焼きや山菜採り、魚釣りなどの体験もできることから人気を集め、去年およそ5000人が泊まった。

 春蘭の里実行委員会がBBC放送にエントリーしたのは、突飛な話ではない。去年10月、名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の公認エクスカーション(石川コース)では、世界17ヵ国の研究者や環境NGO(非政府組織)メンバーら50人が参加し、春欄の里でワークショップを繰り広げた。そして今年6月、北京での国連食糧農業機関の会議で「能登の里山里海」が世界農業遺産(GIAHS)に認証され、能登にはある意味での世界とつながるチャンスが訪れている。春蘭の里はこの機会を見逃さずにエントリーしたのだ。

 とはいえ、他の11組は強敵ぞろいだ。ナイル川に咲くスイレンや稲わらなど1050 万トンの農業廃棄物を利用して、ギフトボックスやランプシェイドなどの高級な紙製品を作るエジプトの非営利企業や、パラグアイの先住民と企業が協力して熱帯雨林でハーブティーなどを育てる取り組み、ニューヨークのビルの屋上スペースで農業を行う取り組みが選ばれている。そのほか、「バイオガスエナジー~インド~」、「燃費の良いコンロ~ウガンダ~」、「電気ごみリサイクル~チリ~」、「ユキヒョウを守れ~モンゴル~」、「中古車リサイクル~イギリス~」などがある。予断は許さない。いつも大声のDさんは「番組のアピール効果は大きい。ぜひトップを狙いたい。そして能登に外国人がもっと来てほしい」と投票依頼に余念がない

 春蘭の里の世界への挑戦。地域のチャレンジは人々の輝きでもある。

⇒16日(日)朝・珠洲の天気  はれ
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