自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★COP10の風~下~

2010年10月26日 | ⇒トピック往来
 それでは、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で金沢大学はどのようにかかわったのか、プログラムを中心に紹介する。まず、サブイベントへの出席で際立ったことが2つ。日本の里山をモデルに人と自然の共生を目指す国際組織「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)」の発足式典が19日開かれ、金沢大学から中村浩二教授、中山節子特任助教が出席した。里山イニシアティブは生態系を守りながら漁業や農業の営みを続ける「持続可能な利用」という概念であり、今後、生態系保全を考える上で世界共通の基本認識となる見込み。中村教授は「海外の研究者を能登に招いて、能登で育まれた里山保全のノウハウを途上国にも伝えたい」と席上抱負を述べた。

        金沢大学はどうかかわったのか

 もう一つのサブイベント。国連大学高等研究所などが中心になって、研究者や行政担当者ら200人が携わった研究「日本の里山・里海評価(JSSA)」の成果報告会が22日に開催された=写真・上=。評価の中核を担う「科学評価パネル」の共同議長を務める中村教授が総括発言を行った。2007年にスタートしたJSSAは過去50年の国内の里山里海をテーマに自然がもたらす生態系サービス(恩恵)の変化を調べたもので、日本人の思い入れが深い里山里海について、初めて科学的な分析でまとめられたことになる。評価は、従来の研究や数値データを集約する手法で、里山や里海の荒廃と生態系サービスの劣化が日本各地で広がっている状況が裏づけられました。総括の中で、中村教授は「今後10年間の研究プログラムを組み、政策提言することが必要」と述べた。

 次にブース展開。石川県・国際生物多様性年クロージングイベント開催実行委員会のブースで「金沢大学の日」(21日、22日)を設け、里山里海プロジェクト(代表・中村教授)の取り組みをPRした=写真・中=。ブースでは、プロジェクトの「能登里山マイスター」養成プログラムや里山里海アクティビティ、里山里海自然学校、角間の里山自然学校、いきものマイスター養成講座などを円形写真を使って紹介。見学者へのノベルティでつくった「能登ゴマ」が人気だった。演出は、輪島市在住のデザイナーの萩野由紀さんに協力いただいた。

 COP10公認の「石川エクスカーション」が23日と24日の2日間の日程で開催された。石川県の自然の魅力や保全の努力をアピールしようと石川県が企画、金沢大学が支援した。参加したのは、世界17カ国の研究者や環境NGO(非政府組織)メンバーら約50人。能登町の長龍寺本堂で行われた里山里海セミナーでは中村教授が金沢大学の能登半島での取り組みを紹介した。参加者から、どのような仕組みで大学と地域が連携するのかについて質問も。地元の地域起こしの組織「春蘭の里実行委員会」のメンバーが手入れしたアカマツ林のキノコ山を見学した。少々旬は過ぎていたが、見事なサマツがあちこちに。昼食では地元の人々たちの心尽くしの山菜料理を味わった。赤御膳が外国人には珍しく、会話が弾んだ=写真・下=。

 バスでの別れ際、お世話いただた地元の人たちが続々と集まって、参加者に手を振った。日本人の目線からすると、人情が厚い人たちなのだ。情の厚さは、自然へのまなざしにも通じる。これが自然と共生する能登の人々の姿である。

⇒26日(火)夜・金沢の天気   くもり
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする