自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆食ありて~星の「わけ」

2008年04月06日 | ⇒トピック往来
 過日、東京の知人に「星のついた店を紹介しますよ」と誘われた。レストランの格付けガイドブックとして知られる「ミシュランガイド東京」で一つ星がついたフランス料理の店だ。ブログで店の宣伝をするつもりはないのであえて店名は記さない。でも、なぜ星の栄誉を与えられたのか想像をたくましくしてしてみたい。

 ミシュランガイド東京に掲載されているレストランは150軒で、最も卓越した料理と評価される「三つ星」は8軒。「二つ星」は25軒、「一つ星」は117軒選ばれている。フランスやイタリア料理が多いのかと思いきや、ガイド全体では日本料理が6割を占めている。和食への評価が世界的に高まっていることがベースにあるのだろう。ちなみに、一つ星は「カテゴリーで特に美味しい料理」、二つ星は「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」、三つ星は「そのために旅行する価値がある卓越した料理」の価値基準らしい。

 私が訪れた一つ星の店は、入り口がいたってシンプル。あの名画の名前を店名に付けているので、名画の複製を掲げるだけで看板となる=写真=。「リーズナブルな価格で最高のフランス料理を創造し、一人でも多くの方に本物を味わっていただきたい」とインターネットの公式ページで謳っているだけあって、ディナーのコースは6800円から。せっかく遠方からきたのでと、下から2番目の1万円のコースを注文した。

 ロケーションはJR東京駅の前にある丸の内ビルの36階なので、皇居も見渡せる。これだけでも随分と値打ちがある。前菜の紹介は省いて、メインディッシュは「和牛フィレ肉のグリエ わさび風味 山菜添え」。私はフランス料理を論評する言葉を持ち合わせてはいないが、ただ、和牛なのに食後のさっぱり感は新発見の食味だった。わさび風味のせいかとも思った。

 メインディッシュが終わり、星のついたレストラン物語はこれで終わりかと思いきや、実はここから物語の第二幕が開く。「お口直しのイチゴのシャーベットでございます」とまずは甘口モードに。そしてプレートに載って出てきたデザートは3種類、ボリュームがあって、甘みの世界にどっぷり浸ることになる。

 デザート攻めにあって、これで終わりかと思っていると、「お口直しのハーブティーでございます」と。ミント系のハーブティーだった。その後、コーヒーでコースは終了する。2時間半ほどの星のついたレストラン物語。「お口直しでございます」の言葉がこの物語の場面切り替えに上手に使われ印象深い。別の席では、オルゴールの「Happy Birthday」ソングが聞こえ、店員がろうそくを立てたケーキを運んで、おそらく親子連れの家族なのだろう客席の雰囲気を盛り上げている。

 店員の言葉使いと洗練された身のこなし、コースの演出、「リーズナブルな価格で最高のフランス料理を」のポリシーと実践、ロケーション、その星には「わけ」があった。ただ、一つ難を上げれば、じゅうたん敷きではないので客席の声が響く。それをうるさいと感じる人もいるだろう。

⇒6日(日)午後・金沢の天気   はれ
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