自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「北海道異聞」その後

2007年09月07日 | ⇒トピック往来

 8月28日夜に「いしかわシティカレッジ」という市民向けの公開講座があり、「メディアの時代を読み解く」のテーマで90分の講義を担当した。メディアに関心を持つ市民30人ほどが受講に訪れた。その話のつかみは北海道旅行中(8月中旬)に読んだ北海道新聞の記事などから拾った。以下は講義で紹介た北海道の「いま」の要約。

       テレビ塔から見えた「いま」

  「白い恋人」で知られた石屋製菓(札幌市)は社長が責任をとるかたちで辞任し、メインバンクの北洋銀行から新社長がくることになった。一連の事件は、チョコレートの賞味期限の延長問題や、製品の中からの大腸菌の検出など広がりを見せた。6月にミートホープ社(苫小牧市)による、牛肉偽装事件と続いており、北海道の食品における安全性と企業倫理の問題が問われた。そして、新千歳空港の土産品売り場では、石屋製菓の商品が撤去され、ガランとしていた。それほど大きなスペースを占めていた。

  しかし、観光バスのガイド嬢は「ミートホープ(苫小牧市)の牛肉ミンチの品質表示偽装事件のときは北海道の人もバカしていると怒ったものです。でも、石屋さんの場合は北海道の銘菓のシンボルのような存在ですので、社長さんも交代したことだし、頑張って立て直してほしいと願っているのです」と。続けて「みなさんもこれに懲りずに召し上がってください」と頭を下げた。社員でもない彼女をして、頭を下げさせる理由はおそらく、石屋製菓という存在の大きさである。地元のプロサッカーチーム「コンサドーレ札幌」の有力なスポンサーであり、退任した社長は札幌財界の若手のホープだった。「北海道の星」を落とすわけにはいかない。そんな道民の愛郷心をガイド嬢は代弁したのだろう。

  北海道のリーディングカンパニーと言えば、かつては北海道拓殖銀行だった。通称は拓銀(たくぎん)。拓銀が経営破綻したのは1997年11月だった。あれから10年、拓銀香港支店の社員が中心となり、香港で投資会社を興した。かつての仲間を呼び寄せるなど、いまではグループ社員合わせて200人の規模になった。そして、8月17日にシンガーポール証券取引所に株式を上場を果たした。上場式典でたたく銅鑼(どら)を囲んで並ぶ同社の幹部たちの写真は勇姿であり、「赤穂浪士」のイメージとダブって見えた。そして北海道出身の45歳の副社長は「いずれは拓銀破たんで後に疲弊した道内経済にも貢献できれば」とコメントしている。苦節10年ではある。

  「さっぽろテレビ塔」=写真=は札幌市の大通公園内にあり、まさにランドマークタワーである。完成が昭和32年(1957年)だから、50歳になった。高さは147㍍で、90㍍あたりに展望台がある。展望台に上って眺望すると、札幌の「いま」が見える。テレビ塔の間近に、住友不動産が開発している40階建てのマンション「シティタワー札幌大通」がある。ほぼ完成していて、総戸数182戸のうちすでに150戸ほどが「ご成約済」となっている(ホームページ・9月4日現在)。この数字は読み方によっては、札幌経済の一つの目安にならないか。

 そして、高さ90㍍から360度で見渡して、クレーンが上がっている建設中のビルをざっと数えると8カ所だった。道央経済圏340万人の中心で8カ所である。月例経済報告書なども参照にして、ひと言でいえば現状は「厳しい」のである。

 ⇒7日(金)夜・金沢の天気  くもり

コメント (2)
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