書名『天才伝説横山やすし』
著者 小林信彦 出版社 文藝春秋社 出版年 1998
横山やすしという漫才師は、こういう人だったのだろうなと思わせる筆力はやはりたいしたもんである。ただなにかいやーな感じが残るのはなぜなのだろう。著者の小説「唐獅子株式会社」が映画され、その主役をやすしが演じたということで、ふたりの交際は深まる、この話が半分近く、いわばこの小説の核となっている。これがあったから書けたのだろう。ここで見たやすしの姿、特に著者をホテルに呼んで、息子の一八が芸能界入りするということを著者に言いながら嗚咽するやすしの姿などは、実際にあったことなのだから、迫真に迫る。ただあざといのである。自滅するしかなかったやすしは、格好の小説のネタであり、そんな男と実際に付き合えた、それをそのまま書いている、それがあざとく感じるのだろう。
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