ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 週末の興行成績 [11月8日(金)~11月10日(日)]と、人気順位 ►ナルホド“超問題作”だった「解放区」、ベンキョーになったフランスアニメ「ディリリとパリの時間旅行」のこと等

2019-11-13 23:51:41 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸この1週間は、6・9・10・11日と地元で続けざまに映画を観てしまいました。順に「変態家族 兄貴の嫁さん」「ディリリとパリの時間旅行」「解放区」「アートのお値段」の4本で、「解放区」だけがシネマ・ジャック&ベティ、他の3本は横浜シネマリンです。
 「解放区」は、例の<あいちトリエンナーレ>以来一連の助成金問題で少し話題になった作品。「大阪市の助成金を受けながら制作したものの、上映する段階になって修正指示が来て、最終的には助成金を返還することを選択した」というものです。→コチラの「あらゆる意味での“超問題作”」というタイトルの(ややネタバレの)記事を読むまでもなく、たしかに“超問題作”で、「公序良俗に反する」と怒る人もいそうだし、「未熟なドキュメンタリー作家のナサケナイ自撮り映画のどこに公共性があるのか?」という人もいそうだし、問題にされるのもむべなるかな・・・、って私ヌルボはこんな映画に金を出すな!と主張しているわけではありません。要は助成の趣旨がまず問題。①公序良俗や政治的立場等とは関係なく映画制作等の文化活動の底辺を広げるべく支援する ②県や市町村のなんらかの施策に沿った文化活動の支援 と2つに分けて考えると、②の分野への助成だけでは国全体の文化の幅が先細りしてしまうし、全体的に「お上の顔色をうかがう」ようになりそうではなはだよろしくない。まあ最初から県等のPRにもなるような作品も必要でしょうから、そこらへんは事前に助成の趣旨を双方が確認し了解していれば問題はないと思うのですが・・・。
 さて、この「解放区」ですが、事前に情報を仕入れていなければふつうにドキュメンタリーと思って観る人が大半でしょう。途中で「あれ? これ誰が撮ってるんだ?」とかだんだん疑問がわいてきて、という感じか。釜ヶ崎を撮った映画(とくにドキュメンタリー)というと、どこかに<温かいまなざし>とかを期待してしまう人が市の福祉や広報担当者ならずともけっこういるのではと思いますが、この作品はそれをみごとに(!)裏切っている点でも注目した次第です。

「変態家族 兄貴の嫁さん」(1984年)は周防正行監督の映画初監督作品ということで。まだ32、3歳だった大杉漣がお父さん役で出演してたとは知りませんでした。(あ、今ウィキペディア見たら、同じ時期に同じ小学校に通ってたのか!) で、この映画、基本にっかつロマンポルノなのに、周防は大好きな小津安二郎のカメラワークを再現して名を轟かせたとか蓮見重彦センセイが高く評価したとか。なるほどねー(笑)。言われて見ればたしかに・・・。

「ディリリとパリの時間旅行」は、ベル・エポックの頃のパリが舞台のアニメで、画家や作曲家、小説家等々の有名人がわんさか登場。観る者のキョーヨーが験される感じ。もしかして小中学生の教材としてつくられたのでは?と思えるほど。人名を漏れなく列挙するは無理のようですが、たとえば以下の人たち。ミュシャ、アンリ・ルソー、パストゥール、エマ・カルヴェ(オペラ歌手)、ドビュッシー、モネ、ルノワール、ドガ、ロートレック、ベルクソン、サティ、サラ・ベルナール、プルースト、レイナルド・アーン(作曲家)、カミーユ・クローデル、ロダン、マリー・キュリー等々。ただ、細かく考えてみれば(&調べてみれば)年齢とか有名になった頃とか無理がありそうな人も混じっているような・・・。ピカソは早すぎるんじゃないの? マティスもたぶん。マリー・キュリーも? 「青い麦」で知られる(?)コレット夫人なんて世に出のは明らかに10年以上は後だぞ。しかし、考えてみれば実に多士済済。やっぱりベル・エポック(良き時代)です。
 上記の有名人以上に注目は主人公の女の子ディリリ。架空の人物ですが、冒頭、万国博の1つのパビリオンでカナック族の見世物に出演しているのです。(ウィキペディアの<人間動物園>の項目を見てみてください。) とするとたぶん1898年のパリ万国博か。なんなとくアフリカのどこかの部族かなと思った人も多いのでは?と思いましたが、南太平洋のニューカレドニア今もフランスの海外領土です。カナック族はそこのメラネシア系先住民です。2018年11月には独立を問う住民投票が実施されたが反対が過半数で否決されたとのこと。もしかして、このアニメもそのことと何か関係あるかな?ということをチラと考えました。まあ女性が活躍したり差別反対のメッセージが随所に折り込まれたりというちょっと啓発的なフンイキも漂うアニメではあります。
 フランスアニメの次はデンマークアニメだ!という気になってきたので、来週はシネマ・ジャック&ベティで「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」だな。

         ★★★ NAVERの人気順位(11月12日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 卒業(韓国)  9.70(10)
②(-) 私の歌は遠く遠く(韓国)  9.65(127)
③(-) ディア・ファミリー 〜あなたを忘れない〜  9.50(12)
④(3) 主戦場  9.49(986)
⑤(2) シークレット・スーパースター  9.39(101)
⑥(6) ハンター・キラー  9.37(3,445)
⑦(8) ディーター・ラムス  9.32(93)
⑧(-) 教会のお兄さん(韓国)  9.27(1,552)
⑨(7) This Changes Everything/これはすべてを変える  9.18(79)
⑩(5) おまえも俺も(韓国)  9.09(54)

 ①③の2作品が新登場です。
 ①「卒業」は、2018年11月の第44回ソウル独立映画祭で最優秀長編賞を受けた韓国のドキュメンタリー。原州(ウォンジュ)にある尚志(サンジ)大学校では、原州大学校を引き継いで創設された1974年以来長く学生たちによる学園民主化闘争が展開されてきました。この作品は、2009年当時当大学の学生として闘争に関わったパク・ジュフアン監督が闘争現場を撮り始めて以来、卒業していく先輩から後輩へと受け継がれていった10年間の闘争の記録をまとめたものです。とくに、異なる時期に理事長や教職員等を相手に闘った4人の若者を主軸に、韓国社会の10年を振り返りつつ、また多くの人々の知らなかったことも盛り込みんで、ラストは卒業式用の服を着て記念写真を撮ることになります・・・。原題は「졸업」です。
 ③「ディア・ファミリー 〜あなたを忘れない〜」は、アメリカのドラマ。ブリジット(ヒラリー・スワンク)に、シカゴの実家から認知症の母(ブライス・ダナー)が徘徊のため一時行方不明になったとの知らせを受けました。母はすぐ発見されましたが、ブリジットは娘を連れて実家に戻ってきます。そこには母に献身的に尽くしてきた父(ロバート・フォスター)と、自分の夢を諦めて両親の面倒をみてきた兄(マイケル・シャノン)がいて、母を老人ホームに入れるべきかをめぐって意見を異にしています。久々に集まった家族たちは、そんな深刻な問題を乗り越えて新しい関係を築いていこうとします・・・。韓国題は原題のままで「왓 데이 해드(What They Had)」。日本では一般公開はなく、ネット配信されているようです。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 寄生虫[パラサイト](韓国)  9.06(16)
②(2) ハチドリ(韓国)  8.38(13)
③(-) モーリス 4K  8.00(5)
④(3) ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド  7.90(10)
⑤(4) ブラッド・シンプル  7.75(4)
⑥(5) ストライキ前夜(韓国)  7.71(7)
⑦(6) ジョーカー  7.64(11)
⑧(7) キム君(韓国)  7.57(7)
⑨(-) ドクター・スリープ  7.50(2)
⑩(-) 台北ストーリー  7.40(5)

 ③⑨⑩の3作品が今回の新登場です。
 ③「モーリス 4K」は、「君の名前で僕を呼んで」のジェームズ・アイヴォリー監督の1987年の旧作で、日本でも88年に初公開された作品で、イギリスの文豪フォスターの原作による2人の青年の許されない同性愛を描いています。韓国では長く劇場公開されないままでしたが、今回4Kデジタル修復版が最初の公開時には実現しなかった無修正版として昨年日本、そして韓国でも公開に至りました。韓国題は「모리스」です。
 ⑨「ドクター・スリープ」については後述します。
 ⑩「台北ストーリー」は、秀作「牯嶺街少年殺人事件」のエドワード・ヤン監督の1985年の作品ですが、日本では2017年とずいぶん遅れて初公開となり、韓国ではようやく今回が初公開です。韓国題は「타이페이 스토리」です。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月8日(金)~11月10日(日) ★★★
           韓国のバイオレンス囲碁シリーズ第2弾「神の一手:鬼手編」が1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・上映館数
1(新)・・神の一手:鬼手編(韓国)・・・・・11/07・・・・・・・・・876,499 ・・・・・・1,070,975 ・・・・・・・・9,355・・・・・・1,246
2(1)・・ターミネーター・・・・・・・・・・・・・10/30 ・・・・・・・・・379,443・・・・・・2,060,363 ・・・・・・・17,247 ・・・・・・・995
       :ニュー・フェイト
3(2)・・82年生まれ、キム・ジヨン(韓国)・・10/23・・・・・・・342,574・・・・・・3,174,044 ・・・・・・・26,191・・・・・・1,013
4(11)・・アダムス・ファミリー・・・・・・・11/07 ・・・・・・・・・186,634 ・・・・・・・209,769 ・・・・・・・・1,697 ・・・・・・・802
5(3)・・天気の子(日本) ・・・・・・・・・・・・・10/30 ・・・・・・・・・・94,966 ・・・・・・・520,372 ・・・・・・・・4,299 ・・・・・・・479
6(新)・・ドクター・スリープ・・・・・・・・・11/07 ・・・・・・・・・・36,407 ・・・・・・・・46,344・・・・・・・・・・410 ・・・・・・・484
7(4)・・マレフィセント2・・・・・・・・・・・・10/17 ・・・・・・・・・・31,439・・・・・・1,432,025 ・・・・・・・12,087 ・・・・・・・260
8(5)・・ジョーカー・・・・・・・・・・・・・・・・・10/02 ・・・・・・・・・・22,013・・・・・・5,223,196 ・・・・・・・45,170 ・・・・・・・207
9(6)・・いちばん普通の恋愛(韓国)・・・・10/02・・・・・・・・・・12,315・・・・・・2,918,538 ・・・・・・・24,848 ・・・・・・・176
10(67)・・ブラックマネー(韓国)・・・・・・11/13・・・・・・・・・・・5,517 ・・・・・・・・32,690・・・・・・・・・・284 ・・・・・・・・29
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・4・6・10位の4作品です。
 1位「神の一手:鬼手編」は、チョン・ウソン主演の前作「神の一手」(2014)同様囲碁をめぐる韓国の犯罪&アクション。今回の主演はクォン・サンウです。囲碁で全てを失った少年グィス(クォン・サンウ)は、唯一の頼りだった師匠のホ・イルド(キム・ソンギュン)までも失って、ただ一人生き残り、この世の中に復讐を誓います。そんな彼の運命を決する場は神の遊び場すなわち自分を死地に追いやった冷酷な碁盤。そこに飛び込んだグィスは全国を回って鬼のような碁を打つ者たちとの対決を展開しますが、死活をかけた対決で彼ははたして<神の一手>を打つことができるでしょうか・・・。原題は「신의 한 수: 귀수편」です。
 4位「アダムス・ファミリー」は、元々は1925年から刊行されているザ・ニューヨーカー誌掲載の漫画家チャールズ・アダムスによる漫画が起源というホラー・コメディで、1991年に実写映画化された作品のアニメ版。いつもクールな変わり者の母モティシアからいたずら者の子供たちが自慢のお父さんゴメス、両親が知らないことがたくさんある少女ウェンズデー、爆発物の実験が趣味の末っ子パックスリーまで、フツーじゃないアダムスファミリーが普通の町に現れると、そんな家族たちを町の人々はモンスターとして追い立て始めます・・・。韓国題は「아담스 패밀리」。日本公開は年内とのことだったのですが、いつになるのかな?
 6位「ドクター・スリープ」は、スティーヴン・キングによる同名小説が原作のアメリカのホラー。あの「シャイニング」で描かれた惨劇から生還したダニーの40年後が語られます。日本でも11月29日公開ということで、公式サイトをはじめ諸情報がすでに発信されています。韓国題は「닥터 슬립」です。
 10位「ブラックマネー」は、韓国の犯罪&ドラマ。ソウル地検内で憚ることのない問題の検事として通っているヤン・ミンヒョク(チョ・ジヌン)は、自分が調査を担当した被疑者が自殺する事件が原因でたちまち崖っぷちに追い込まれます。濡れ衣を晴らすため内幕を探っていた彼は、被疑者が大韓銀行安値売却事件の重要証人だったことを知ります。根拠は疑問のファックス5枚。資産価値70兆ウォンの銀行が1兆7千億ウォンにこけていく希代の事件の前でヤン・ミンヒョク検事金融監督院、大手法律事務所、海外ファンド会社が入り組んだ 巨大な金融不正の実体と向き合うことになりますが・・・。原題は「블랙머니」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(新)・・ディア・ファミリー・・・・・・・・・・・11/07 ・・・・・・・・・1,533・・・・・・・・・・2,668 ・・・・・・・・・・21 ・・・・・・・・・・42
       〜あなたを忘れない〜
2(新)・・台北ストーリー・・・・・・・・・・・・・・11/07 ・・・・・・・・・1,188・・・・・・・・・・1,944 ・・・・・・・・・・16 ・・・・・・・・・・23
3(3)・・ボーダー 二つの世界 ・・・・・・・・・・10/24 ・・・・・・・・・1,140・・・・・・・・・14,651 ・・・・・・・・・121 ・・・・・・・・・・30
4(4)・・ハチドリ(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・・・899・・・・・・・・136,452・・・・・・・・1,113 ・・・・・・・・・・15
5(新)・・ダクラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11/07・・・・・・・・・・・414 ・・・・・・・・・・・936 ・・・・・・・・・・・8 ・・・・・・・・・・26

 1位と5位の2作品が初登場です。
 1位「ディア・ファミリー 〜あなたを忘れない〜」については上述しました。
 5位「ダクラ」(仮)は、めずらしいチュニジアのホラー。ジャーナリズムの学生であるヤスミンと彼女のクラスメートの男性ワリドとビラルの計3人は、モンギアという女性が関わっている25年前の未解決事件を調査しています。モンギアは殺害された女性を発見した魔法使いの疑いが持たれて魔女と呼ばれ、現在は投獄されています。事件の秘密を明らかにするために3人は彼女が住んでいた村を訪ねて行きますが、知る人もなく地図にも出ていないその村の名はダクラ。不気味なオーラとひんやりした沈黙だけ立ち込めています。村長は彼らを一晩泊まるように誘いますが、ヤスミンたちはダクラの深い秘密に巻き込まれていきます・・・。え、この人食い村(??)にまつわるおぞましい物語が実話に基づいているんですと? 韓国題は「더 빌리지(ザ・ヴィレッジ)」。評論家2人が「「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を連想させる」と書いていました。日本公開は未定のようですが、ちょっと観てみたいような・・・。