ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国語]なぜ「八字(パルチャ)」が「運命」を意味するのか?

2017-05-12 23:55:50 | 韓国語あれこれ
【1】 팔자の意味と用例

 韓国語で「팔자」(パルチャ.八字)という言葉をしばしば見かけます。
 意味は、「運命、運、運勢、星回り」等が辞書にあります。
 <Kpedia>(→コチラ)や、<ミリネ韓国語教室>(→コチラ)の記事にたくさん用例が載っています。
 主なものを拾ってみると・・・。

・팔자가 좋다. 
 星回りがいい。楽な人生を送っている。

 ・・・この反対は팔자가 나쁘다.

・팔자가 피다.
 生活が豊かになる、楽になる。(直訳は「八字が花開く。」).


・팔자가 세다.
 苦労をする。星回りが悪い。(直訳は「八字が強い。」)


・팔자타령
 身の不幸を全て運命のせいにして嘆く。(漢字表記は「八字打令」。直訳すると「八字節(ぶし)」。)


・아이고~ 내 팔자야~.
 ああ、なんと酷い運命なんだ!


・걱정도 팔자다.
 大きなお世話だ。心配しすぎだ。(直訳すると「心配も星回りだ。」)


・개팔자가 상팔자.
 犬の人生が羨ましい。(直訳すると「犬の人生が上八字。」)

 
【2】 なぜ「八字」が運命を意味するのか?

 次に、ではなぜ「八字」が「運命」を意味するのか、というと・・・。
 四柱推命では、生まれた年・月・日・時刻をそれぞれ十干(甲乙丙丁~)と十二支(子丑寅~)を組み合わせた干支(えと・カンシ)を漢字2文字ずつで表します。
 これを「年柱・月柱・日柱・時柱」といい、これによりその時刻に生まれた人の運命が決定づけられる、というのが四柱推命の基本です。
 4つの柱それぞれが2文字ずつなので合計8文字になり、これが運命を規定するというわけです。
 以上が「八字」が「運命」を意味する理由です。

 と、ここで記事をオシマイにしてもいいのですが、上記の十干と十二支の組み合わせについてもう少し詳しく書いておきます。

【3】 干支順位表と、干支にちなんだ歴史用語・習俗などについて

 干支は日本でも古くからさまざまに用いられてきました。
 歴史用語では、庚午年籍(670)、壬申の乱(672)、戊辰戦争(1868)等。これらは、その年を干支の組み合わせで表記したものです。
 しかし、日本では歴史上の大きな出来事は干支よりも元号の方がより多く用いられています。
 一方韓国では、その年の干支に依ってよばれる歴史上の出来事が数多くあります。これについては、<干支にちなむ朝鮮・韓国の歴史上の出来事>と題した過去記事(→コチラ)を参照のこと。53の例を挙げてあります。壬辰倭乱(1592)(=日本では文禄の役)はしばしば見かけますね。その他、日本の高校歴史教科書にある用語では壬午軍乱(1882)・甲申事変(1884)・甲午農民戦争(1894)、それから乙未事変(1895)は今は閔妃殺害(虐殺?)事件ですか? あ、中国史では何といっても辛亥革命(1911)がありましたね。その前の戊戌の政変(1898)も世界史の教科書に載っています。
 日を表す干支にちなんだ用語の中で、日本で用いられている・・・いや用いられていたのは庚申塚(庚申信仰)しか思い浮かびません。十二支だけなら初午、初巳、土用の丑の日、酉の市などいくつもあるのですが・・・。

 年・月・日・時刻のうち、わかりやすいのは上記の年と日の干支のしくみです。古典や日本史の教科書・教材に載っている干支順位表を見れば一目瞭然です。(ホント?) 昔教わった(?)ことをちゃんと憶えている人は何%くらいいるものか、ヌルボは全然見当がつきません。以下、(たぶん)高校等で教えている(?)ことを書きます。

 組み合わせの総数は10と12の最小公倍数で60通りになります。その一番初めは、十干の最初の甲(かのえ・コウ)と十二支の最初の子(ね・シ)を組み合わせた甲子。次は十干と十二支の2番目の字を組み合わせて乙丑ですね。11番目は十干は最初に戻って甲、これと十二支の11番目・戌をくっつけます。
 したがって年の場合、たとえば甲子年生まれの人だと生まれてから60年目に再び甲子年が廻って来て「ふりだしに戻る」わけです。だから還暦(韓国だと還甲(환갑.ファンガプ))というのですね。正確には、満60歳の誕生日ではなく、数え年61歳となった元日が還暦を迎えた日になります。

 音訓2つの読み方入りの干支順位表は次の通り。また、韓国語の読み方はその下の表でわかります。


 韓国では、干支のことをそのまま音読みして<간지>(カンジ)といいますが、<육십갑자>(六十甲子(ユクシプカプチャ)という言葉も用いられます。<육십갑자>で画像検索すると、上のような干支順位表がヒットします。また年の干支を<세차>(歲次.セチャ)、月の干支を<월건>(月建.ウォルゴン)、日の干支を<일진>(日辰.イルチン)といいます。

 時刻の場合も、十干抜きの十二支のみ用いられてきました。たぶん高校の古典や日本史でも子の刻(午前0時)から始まって2時間おきに丑・寅・・・と続く図表しか乗っていません。時刻を十二支であらわすと昼の12時は午(うま)の刻つまり正午で、それより前が午前、後が午後・・・ということは知らないでふうに使っている人が多いのでは? なお、韓国のラジオを聞いていると、夜の12時に「자정(子正)をお知らせします」と言っています。昼の12時は오정(午正)ともいいますが、정오(正午)の方が一般的なようです。
 ※十二支のほかに、「九つ」(午前0時)から2時間おきに八つ・七つ・・・(最後は四つ)と減じていく呼び方もあります。だから「お八つ」(午後2時)というのだとか・・・。
 私ヌルボも、そもそも時刻の干支では十干と十二支がどのように組み合わされているのか?からして最近まで知りませんでした。月の干支も同様です。ウィキペディア等々から情報を得て、月と時刻の干支の組み合わせがどうなっているのか表にしてみました。



 干支はすでに殷代(紀元前17~前11世紀)からあったとのことです。以後3千年以上、よくこんな精緻(というか複雑というか)体系が作り上げられ伝えられ、そして今も用いられているとは驚くべきものです。
 (※素朴な疑問。同じ日時に生まれた人は皆同じ八字=運命になるとは思えないんですけどねー。)
 日本と韓国も干支について同じような伝統・文化・慣習等を共有しているのも当然ですが、異なる点も比較すれば見えてくると思います。(そこまでは踏み込みません。)

 じつはこの記事は2つ前の記事→<「ウルシニョンスロプタ」(ものさびしい・みじめだ)の語源は?>の続きの記事のつもりで書き始めたのですが、干支について知っていることをほとんどありったけ書いてしまい、(例によって)前書きのつもりが長くなりすぎてしまいました。(笑)
コメント (6)
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