ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

定年前退職S氏のソウル・慶熙大学校10週間留学記 (3)

2015-07-08 23:24:32 | S氏の慶熙大学校10週間留学記
 <定年前退職S氏のソウル・慶熙大学校10週間留学記 (2)>の続きです。

 [ヌルボより] 今読み直し気づいたのは、S氏が韓国料理を全然抵抗なくあれこれ食していること。それもとくにグルメ情報等に頼らず歩いていてテキトーに食堂に入って食べたいものを注文して食べ、ほとんど「おいしい」と感想を書いています。どちらかというと、韓国料理がさほど好きとはいえないヌルボにとってはうらやましいかぎり。
 また、たぶん多くの日本人は韓国語が話せても、必要な場合以外は自分からあまり韓国人に話しかけたりはしない傾向があるのではと思いますが、S氏は自然にいろんな会話を店の人等と交わしたりしているようで、これもお人柄でしょうが、大いに語学学習にプラスになっていますよね。

◎4月4日(土)
 二日酔い気味で7時20分に目が覚める。天気は良好。窓下に見える白木蓮の花が大きめの木に密集して咲いていて目の保養になる。
 狭い部屋の掃除をして出かける。
 鐘閣駅前の高くてきれいなビルの12階を目指す。場所は一等地で家賃は高そう。
 今日は句会があると聞いていた。大き目の会議室に入ると20名ほどが集まっていて、日本人だけでなく韓国の人も7、8人参加していた。主宰者のHさんという方を訪ねていったが、いきなり「一句作ってください」といわれ面食らう。俳句の心得は全くなく当惑したが、とりあえず恥ずかしい句を出さざるを得なくなった。
 2時から6時近くまで句会が行われた後、懇親会にも参加させてもらう。皆親切でいい人ばかりで、韓国での過ごし方等についても教えていただいた。「3ヵ月で帰ってしまうのはもったいないからもっと長くこちらで暮らせ」と勧誘された。できることならそうしてみたい。

◎4月5日(日)
 メールを書いているといつの間にか時間が過ぎてしまう。今日のやるべきことは作文の宿題。二日酔いのため食欲はなし。宿題はあの嫌いな作文。何とか仕上げたものの、辞書と首っ引きのため恐ろしく時間がかかってしまった。午後は久しぶりにノレパンへフルート(タンソ)の練習に行く。2時間2千ウォンとちょっと高いが、店員が「少しサービスします」と言って30分負けてくれた。
 5時になって回基(フェギ)の隣駅である清涼里(チョンニャンニ)駅とその1つ先の祭基洞(チェギドン)駅の間にある京東(キョンドン)市場に出かける。かなり寒い。重ね着をしないと風邪でも引きそう。ここは初めて行ってみる。漢方の多いことで有名なところ。商店街沿いにおびただしい数の漢方薬局が軒を連ねる。休日のため開いている店は意外と少なかったが漢方薬を煎じた匂いがすごい。一見に値する。もっとすごいのが道を一つ隔てたところにある市場(清涼里水産市場・東部青果市場)だ。やたらでかい。鮮魚、精肉、野菜、果物何でもあり、所狭しと軒を連ねる。狭い路地が縦横に走り迷子になりそうに広い。韓国人の旺盛な生活力を肌で感じる。
 そろそろ腹が減ってきた。時間は6時半を回った。今日は二日酔いのためあまりたいしたものを食べていない。どこの店に入るか物色を開始する。魚が食べたかったので魚のあら煮料理を出す店を発見。意を決して店に入る。注文すると、「この料理は4時までなんです」と言われてしまった。でも何とか出してくれた。食べた後に店を出ると、たしかに「4時までです」と表示がしてある。それにもかかわらず料理を出してくれたことに驚くと同時に、絶妙の旨さに満足。日本でもあら煮の旨さは知れ渡っているが、韓国も同じ。魚の骨にこびりついた肉片に食らいついてひとり寂しく肉片をほおばっていると、店のオンニが気をきかしてかしてか、「今日本の人が2人来てますよ」と声をかけてくれる。その2人は大阪から来た30代後半かなと思われる夫婦。結局「合流しましょう」ということになった。話を聞いているとギトギトの大阪人とすぐわかる。気がついたら海外旅行の話の花が咲いていた。サンナクチ(生きタコ)を肴に焼酎をしこたま飲む羽目になってしまう。奥さんの方が乗りがよくてかなり飲める口。ご主人の方は最初警戒気味だったが、終わってみると焼酎が6本空いていた。こんなことではいけない。

◎4月6日(月)
 昨晩N先生(鎌倉のハングルサークルの先生)から激励のメッセージを頂いていた。ありがたい。学校の桜は満開になっていて非常に美しい。白木蓮、連翹(レンギョウ)も一緒に咲いていて彩りもすばらしい。あちらこちらで写真をとる学生が目に留まる。桜が人の心を魅了することに国の違いはないようだ。
 今日の授業は文法と筆記。文法もかなり文章を書かされるが、これがつらい。スペルが出てこない。筆記の授業はそれどころではない。ひたすら書かされる。朝起きてから寝るまでの行動を詳しく書けといわれ、しかも習った文法は必ず使えという指示がでる。周りの学生は比較的すらすらと書いている。先生が見かねて助け舟を出してくれる。何とか書き上げたが、綴りの間違いをいやというほど指摘される。初級クラスに対する甘い考えを修正せざるを得ない。これからますます難しくなると脅かされる。宿題も出た。やらなきゃ。

◎4月7日(火)
 今日の文法の授業は、知っている内容だがなかなか整理できず、頭の中が混乱してくる。聞き取りは簡単だが筆記させられると書けない。
 午後は韓国文化の特別授業。タンソという韓国の伝統楽器の講座。いわゆるフルート。1回2時間で8回の講座。講師は62歳で小学校の先生。助手に若い女性がいたが、フルートの先生だという。タンソは早々には音が出ないが何とかなりそう。簡単な曲の楽譜を渡されこれを練習しましょうとのこと。楽譜には見慣れない漢字が記載されていた。先生から年齢を聞かれ答えたところ激励の言葉を受けた。
 夜は、カンさんのお客さんで60過ぎの人が会いたいと言っているとのことで(明洞地下街の)店まで出かける。7時過ぎにカンさんの店で落ち合い、カンさんの仕事が終わるまでホフで話を伺う。年は63歳、西江大で学んでいて、奥さんは韓国人。日本の住まいは(首都圏の)S市とのこと。奥さんに韓国語を習ってもけんかになってしまうので、よそで勉強しているとの話。西江大学は文法の授業はほとんどなく会話が中心だそうだ。大学によってかなり方針に違いがあるようだ。自分より年上の人が同じように大学で勉強しているのは心強い。サムギョプサルを食べて帰宅。

◎4月8日(水)
 今日も欠席者が多く、今まで1度もクラス全員がそろったことがない。
 文法の授業は習ったことのある内容だが、やはり授業速度は速い。午後は会話の授業だが、他の科目と間違えてしまい教科書を忘れる。隣の女の子に見せてもらう。ネイルアートで爪は派手派手。電話でのやり取りを行うのだが、設定された状況がイマイチよくわからず、うまく進まない。その女の子が教えてくれたので何とかしのいだ。
 校内の木蓮はかなり散ってきた。桜もそろそろ散り始まるのか。ただこの3日間の冷え込みで花持ちはよいかもしれない。
 午後、講堂の裏へ行ってタンソの練習をする。雨と風がなければいい練習場所になると思う。
 練習の後、遅めの昼食にしたが、ガラガラで助かった。ここの学食はいつも混んでいて食券を買うのに一苦労する。
 夕食がてらいつも酒を買いに行くセブンイレブンへ行く。「昨日は来なかったからどうしてたのかと思っていた」と心配してくれ、焼酎1本だけ購入。近くに鯖煮のおいしい店があるらしいので調べてくれるとのこと。ありがたい。

◎4月9日(木)
 今日の文法は후에、기 전에について。知っている内容だが、わかりやすく教えてくれる。マラギ(会話)の授業は韓国料理について。新しい単語が結構出てくる。まあ何とかなる。
 2日続けて3,4時限の教科書を忘れる。恥ずかしい。さすがに先生が見かねて教科書をコピーしてくれた。
 授業終了後、今日も学校でひっそりと笛の練習。昼食抜きで1時過ぎから始めるのでお腹は空くが、3時過ぎの学食は人影はまばらで落ち着ける。昼食はスパゲティ。サラダとスープがついて3300ウォン。キムチは食べ放題。
 帰りに長袖のシャツを1枚購入。昼間はやっと暖かくなった。
 あっという間に5時半。宿題をやらなくては。7時半頃何か食べようと外に出る。しばらくぶらぶらするがとくに食べたいものが見つからない。中華でも食べようかと思ったが見つからない。帰り際「トンヘタン」と表示のある店があった。客席には2人客がいるだけだが、とりあえずトンへタンを注文。出てくるまでしばらく時間がかかったがかなり旨い。清涼里で食べたソトリタンのように魚のあらが煮込んである。しかも白子も入っていて野菜も十分だ。ご飯を付けて6000ウォン。店のおばちゃんとたわいのない会話をした。

 [ヌルボ] <ソトリタン>はよくわかりません。<トリタン(도리탕)>はふつう<タクトリタン(닭도리탕)>といわれるように鶏料理なんですけどね。それがタクでなくソ(牛)になってるモノ??
 ※<タクトリタン>については→ソウルナビ参照。 
 ※この件を調べていたら、国立国語院は<トリタン>の<トリ>は日本語の鳥(鶏)に由来していて、つまり日帝の残滓なので<닭볶음탕(タクポックムタン)>と訂正してこれを標準語にしたそうです。しかし、2012年初め頃、人気作家の李外秀(イ・ウェス)氏がツイッターで「<トリタン>の語は韓国語由来である」と主張して一大論争が巻き起こったということを知りました。当時の「朝鮮日報」にも取り上げられています。(→コチラ。) 中には「日本語のトリという言葉も、元を正せば韓国語のタクに由来するのだ(!)等々いろんな説が出てきてしっちゃかめっちゃか。こうした<日帝残滓>語の言い換え自体を批判する意見もなではないし・・・。

 料理関係でもう1つ、<トンヘタン>というのもちょっと検索してみましたが不明です。トンヘ(東海)ヘムルタン(海鮮鍋)ですかねー?