ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

ぜひ見て、聞いてほしい! 脱北者女性3人の証言の動画  = イ・ヒョンソ、パク・ヨンミ、パク・ジヒョン =

2015-07-26 11:52:58 | 北朝鮮のもろもろ
 韓国統一部によると、2014年末までに韓国に来た脱北者は2万7千人を超えたとのことです。
 2006~11年には毎年2000人以上の脱北者が韓国に入国しましたが、金正恩時代になって減少し、2012年は1502 人、13年は 1514 人、14年は1397人となっています。
 ※韓国ウィキペディア「북한이탈주민(北韓離脱住民)」の項目(→コチラ)参照。
 この説明文中で私ヌルボが注目したのは、脱北者の年齢は30代=32%、20代=27%と、青年層が過半数を占めていること(2011年6月基準)、そして女性の割合が着実に増加し、2012年10月の暫定統計では69%にも達するということです。
 また、中国や東南アジアなどで隠れて過ごしている脱北者も数十万人に達すると推測される、とのこと。つまり、韓国に入国できた脱北者は、脱北者の一部にすぎないのです。
 しかし、無事韓国にたどり着いても、北朝鮮で身につけた知識・技術は使い物にならず、社会の制度・習慣もまるで違う韓国社会に適応するのが困難で、多くは苦しい生活を強いられ、差別的な扱いも受けたりして、さらにイギリス等へ出国する人も増えているようです。

 以前から、脱北者たちが書いた手記は韓国の脱北者団体のサイト等で数多く読むことができます。(少しずつでも訳出していこうと思いつつ、手をつけていないままですが・・・。) また最近は自身の体験を語った動画もいくつか見られるようになりました。
 そんな中で、日本語の字幕がついているものを3つ紹介します。いずれも女性です。

①イ・ヒョンソ(이현서)さん
 「苦難の行軍」といわれる深刻な食糧難で多数の餓死者が出た頃の1997年、14歳の時に鴨緑江に面した中国との国境の町恵山(ヘサン)の家を出て脱北した彼女。瀋陽の親類の元に送られて10年間中国で公安の目を恐れつつ生活し、また実際に公安の訊問の危機をくぐりぬけたりした後ラオスを経由して韓国へ・・・。
 彼女が多数の聴衆を前にしての英語による講演は、さまざまな人に多様な内容の発表の場を提供しているTEDというアメリカの講演会グループの設定の下で行われたもので、また動画配信もそのTEDのサイト内でアップされています。日本語字幕付きです。
 コチラです。
 非常に巧みな弁論で、説得力があります。最後の、ラオスで危機に直面した時のエピソードはとても感動的です。
 YouTubeにも韓国語字幕付きの同じ動画があったので貼っておきます。コチラにはネチズンのコメントがいくつか書かれています。

 なお、最近(2015年7月2日)の<newfocus >の記事(→コチラ)によると、彼女は韓国外国語大学に在学中(英語・中国語を専攻)とのことです。

②パク・ヨンミ(박연미)さん
 2014年10月の<聯合ニュース>の「脱北女子大生、イギリス議会で北韓の実像証言」という記事(→コチラ.韓国語)によると、その時点で21歳。2009年秋モンゴル経由で韓国に入り、東国大学校警察行政学科に在学中。下の動画ではインタビューに答えて「職業はジャーナリスト」と語っていますが・・・。
 とりあえずYouTubeの動画を貼っておきます。
 この動画の内容は→コチラの記事でほとんど文章化されています。
 ただ、私ヌルボが「気になること その1」は、この動画を提供している<ザ・ファクト>が幸福の科学の公式インターネット番組ということ。こうした北朝鮮関係以外では嫌韓嫌中とか、反安倍の組織・運動に対する批判の記事・動画が満載です。北朝鮮の人権抑圧を批判するなら、日本国内の人権状況についても敏感であってほしいものです。
 「気になること その2」は、「美人すぎる脱北者」云々というタイトルの軽薄さ。「美人すぎる市議」あたりからか、「美人すぎる○○」という表現がアチコチで目につきますが、こういうところで用いるのは無神経でしょう。もっとも、韓国では2012年頃からチャンネルAで脱北者の美女たちを集めたトーク番組「今会いに行きます(이제 만나러 갑니다)」が人気を集めて・・・といったことがありました。(→過去記事及びコチラの記事参照。) 中国で人身売買の対象になっている多くの脱北者女性を「値踏み」する目と、どこか通底する嫌な感じがするんですけどねー・・・って、これは考え過ぎですか?
 まあ、こんな「気になること」はあるにせよ、パク・ヨンミさんの話している中身は耳を傾けるべきものだと思います。

③パク・ジヒョン(박지현)さん
 パク・ジヒョンさんも90年代後半に、飢えのため声も出なくなった父親の身振りの指示に従い、瀕死の父を後に残して脱北した女性です。この動画は、アムネスティが彼女にインタビューし、編集したものです。中国では売り飛ばされたり、男の子を産んだり、また公安に見つかって北朝鮮に送り返されたり等々非常に過酷な経験をしてきましたが、今は結婚して2008年イギリスのマンチェスターに定着し、北韓人権ヨーロッパ聯合(EARHNK)で活動しているとのことです。※→コチラと→コチラの記事(韓国語)参照。


 この3人の女性が経てきた苦難の物語は韓国に来た3万人近い脱北者それぞれにもあります。3人は本人の強い意志と努力、そして幸運により死地を脱することができました。しかし韓国に来た脱北者をめぐる状況は先に記したように厳しいものがあります。
 そして、上述のように中国等で隠れ過ごしている数十万人ともいわれる脱北者たちにとっては、今まさにその生死の瀬戸際に立たされているということに、世界は、そして私たちはもっと目を向けるべきだと思います。苦難の物語が悲劇のまま終わってはあまりにも悲惨です。先の北朝鮮の生体実験の記事(→コチラ)でも書きましたが、慰安婦問題や歴史遺産問題等々よりも喫緊の問題だと私ヌルボは思うのですが・・・。