ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国でも「赤チン」は長い間愛用されてきた薬だった。言葉は今も使われている、かな?

2015-04-12 10:44:09 | 韓国関係の雑情報
 一昨日(4月10日)のカイカイ反応通信愛読者さんから、韓国映画「建築学概論」中に「2012年の屋外屋台でヒロインが転んで怪我をさて、主人公が『こんなの赤チン塗っとけばいい』というシーンがあった」とのコメントをいただきました。
 赤チンについては、本ブログでも過去記事(→コチラ)で、ドラマ「英雄時代」に「アカチンニナ バルラジュオ」(赤チンでも塗ってやれ)というセリフがあったこと、映画「僕が9歳だったころ」でも赤チンが出てきたことを書いたことがありました。

 また、たまたま今読んでいる金時鐘「朝鮮と日本に生きる」(岩波新書)の中にも次のようなくだりがありました。著者が国民学校の頃、つまり戦時中の話です。
 (「兵隊ごっこ」では)仰々しいまでに塗ってくれる「救護班」の赤チンキを勲章に、意気揚々夕やみ迫るなかを引き揚げたものです。

 このように戦前から韓国でも愛用されてきた赤チンですが、商品名は아까징끼(アッカチンキ)」でした。
 これは빨간약(パルガニャク.赤い薬)」ともよばれてきました。
 今google検索すると「아까징끼」は3万5千件、「빨간약」は22万5千件で、後者の方がずっと多く用いられてきたようです。上記の「建築学概論」中にセリフも→コチラを見ると「하아아... 이거 괜찮아 이거.. 빨간약 바르면 금방 나아 이거」でした。

 さて、このマーキュロクロム(商品名赤チン)ですが、大分前から日本では販売されていないと思っていましたが、今ウィキペディアを見ると次のような説明がありました。
 日本では、製造工程で水銀が発生するという理由から1973年頃に製造が中止されたが、常備薬として求める声は多く、海外で製造した原料を輸入することで現在も販売されている

 ・・・そうだったんですね。
 一方韓国ウィキペディアの「머큐로크롬(マーキュロクロム)」(→コチラ)の説明文では「現在は水銀が入っているという理由で市販されていない」とあります。エンハウィキミラーの記事(→コチラ)等、他の韓国サイトの記事を読むと、どうも1990年代になって発売禁止されたようです。
 その後アカチンキに代わって用いられているのが「ポビドン(포비돈)」(orポビドン ヨード)です。
     
 色から推定して、これも「赤い薬」の範疇なのかどうか? 「建築学概論」でも現代の場面で「バルガニャク」と言ってるし・・・。
 日本ではポビドンヨードといえば、イソジンのようなうがい薬がまず主な用途のようですが・・・。

 日本の場合、赤チンの後継といえばマキロンでしょうが、近年では湿潤療法というのが勧められているそうですね。
 しかし、私ヌルボの少年時代は子どもの数も多かったし、外で大勢で遊んでいたのでケガも多く、 肘や膝などに赤チンを塗った子はごくふつうに見かけたものですが、この頃はかなり子どものちょっとしたゲガは減っているように思います。実際のところはどうなんでしょうか?

 さて、韓国サイト等でアカチンキや赤い薬の用例を見ると、切り傷や擦り傷の場合だけでなく<心の癒し>の場合にも象徴的なものとしてこれらの言葉や図柄が用いられることがわりとあるようです。
 たとえば次のような本。
       
 「마음에 빨간약 바르기(心に赤い薬を塗る)」(左)は、波登かおり「1分間元気チャージ」(2005)の翻訳本。内容は原題でおよそわかりますね。右の書名は빨간약(赤い薬だけですが、内容は悩みを抱えた子どもにどんな話し方・接し方をするかというものです。
 また次のような画像もありました。
   
 左のイラストは一目でわかりますね。右は単に膝の傷に薬を塗っている絵かと思ったら、「心の傷を負った犯罪被害者のために、ソウル警察では犯罪被害者心理専門要員を置いています」という警察からのお知らせ記事のイラストです。
 こういう「心に赤チン」といった発想は日本でもあるかもしれませんが、どうも韓国っぽい感じがします。ことのついでですが、これと同様に「心に絆創膏」というのもあります。
   
 右の絆創膏だらけのハートは手術するしかないレベルだと思いますが・・・。そういえば、韓国映画「ファイヤー・ブラスト 恋に落ちた消防士」の原題も「반창꼬(絆創膏)」でした。(なぜか<膏>が濃音になってます。) 消防士と医師という主人公カップルが、互いの傷に絆創膏を貼ることができるのか、という意味ですが、原題のままだと日本人には全然意味不明だったでしょうね。

 そういえば私ヌルボ、この数十年間(?)まれに切り傷・擦り傷等があってもすべて自然治癒にまかせていたことに思い至りました。