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韓国ドラマ「英雄時代」を読み解く[5] 工事現場で多用される日本語の用語

2010-04-16 23:57:58 | 韓国語あれこれ
「英雄時代」を読み解く、というよりも、「英雄時代」は単なる入り口で、その時代を読み解く、という感じになってますね。

 第3話からです。
 江原道通川の寒村から汽車に乗って元山に出たテサンたちは、トンネル建設現場で働くことになります。

 反抗分子の探索のため乗客を検問する場面や、工事現場の場面で日本語の単語がいくつも出てきます。

 官憲は日本人のようですが、丸ごと日本語のセリフはなく、日本語は「バカヤロ」だけ。
 工事現場でも、韓国語中でも「チクショー」は日本語。

 何かの本で、この「バカヤロ」はインドネシアで今も残っている日本語だと記されていました。植民地や戦時中のアジア各地の占領地で、この言葉は現地の人々の記憶に長く残るほど多用したということでしょうか。

 工事現場でケガをしたテサンに対して、「アカチンニナ バルラジュオ」(赤チンでも塗ってやれ)との声。
 そういえば、映画「僕が9歳だったころ」でも「アカチン」という日本語がそのまま用いられていました。
 今赤チン、すなわちマーキュロクロム液は水銀中毒の危険性とかで使用を控える動きが進んできているので、日本でも韓国でも死語になりつつある、といっていいのかなな?

 1度村に帰ったテサンは、まもなく再び家を出で京城に行きます。
 第6話です。徳秀簿記講習所の広告にテサンは目をとめるのですが、その住所は「京城府鍾路通二丁目十二番地」。京城はキョンソン(경성)と言ってます。鍾路通はチョントン(鍾通.종통)です。二丁目はイジョンモク(이졍목)と日本語的読み方をしています。現在はもちろんチョンノ(동로.鍾路)・イガ(이가.二街)です。

 第7話でも、仁川の建築現場の場面で日本語の単語がいくつか出てきます。
 「金を貸してくれ」というセリフ中、「オカネ」だけは日本語そのままです。
 「ドカタ(土方)」は韓国語では「ノガダ(노가다)」と変化して使われています。

 建築・土木関係の韓国語の中で、日本語由来の言葉が多く残っている(残っていた?)のは、植民地時代にその分野で働いていた朝鮮人がたくさんいた名残りです。

 上記の「ノガダ」は私ヌルボも何かで読んで知っていましたが、元山の場面で出てくる「ヤリキリ」という言葉は意味がわからず、広辞苑にもありませんでした。ネット検索で少しヒットしましたが、つまりは目標を設定してそれをやりきること、つまりのことなんですね。

 また「シンマイ(新米)」はそのまんま。
 「ヤリキリ」の他に意味のよくわからない日本語は「テモト」。
 「テモトのくせにあいさつもなしか」というセリフの中で使われています。
漢字だと手元(手許)。「広辞苑」には6番目の意味として載っていました。「(左官職人などの)傍らについて助手をつとめる人。」

 川崎市立図書館の蔵書中に박숙희(パク・スッキ)「우리말 속 일본말(韓国語の中の日本語)」という本があります。(下の画像)

 韓国語の中の日本語の固有語117語、日本式の漢字語115語、日本式の外来語39語を挙げて意味や用例を説明するとともに、「固有の韓国語に言い換えよう」という内容の本ですが、その中にも上記の「ノガダ」や「テモト」もあり、そのほかにも「コウバイ(勾配)」「ドカン(土管)」「トギダシ(研ぎ出し)」「アシバ(足場)」「ハンバ(飯場)」等の現場関係の用語が収められていました。

 この本に載っている日本語由来の言葉の中には、「タクアン」「タンムジ」「ベントー」「トシラク」のように韓国語学習者にはおなじみの例もありますが、日本人として首をかしげるようなものも相当数あります。そこらへんの考察はまた機会があれば、ということにしておきます。

       
   【「우리말 속 일본말(韓国語の中の日本語)」の表紙

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