ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国の漫画]キム・ギュサム「安いです 千里馬マート」は、なんかシュールなギャグ漫画 

2014-02-22 23:52:40 | 韓国の漫画
        

 このところブログの更新が滞っている理由の1つは、アップ予定の記事が内容的に書きにくいということです。

 2週間ほど前にイッキに読了したギャグ漫画「安いです 千里馬マート(쌉니다 천리마마트)」も、感想をどう書くか思案のはてに、結局いまだ方針不明のまま書き始めた次第です。

 この漫画の購入のきっかけは<innolife>の書籍通販のページ。説明文には「<NAVER漫画>の代表的ウェブトゥーン(ネット漫画)作家キム・ギュサム(김규삼)の2作目の長編。マート(=スーパーマッケット)」を背景に、今日の韓国の経済・経営・政治等を才知あるパロディとして描き、その漫画的才能と時事的な感覚が完璧な共感を得た最高の作品」とあります。

 <NAVER漫画>のサイト等で直接確認すると、2010年8月~2013年10月連載されて、第2部の最後の方はまだ→コチラで見ることができます。
 連載中から人気で、この書籍版(全5巻)の第1巻は2012年7月に発行されました。

 で、肝心の内容について。上記innolifeの説明文だけ見て何か山口六平太とか島耕作とかをちょっと連想してしまいましたが、実際に読んでみるとこれがぜ~んぜん大違い。
 早い話がギャグ漫画で、「ありえねー!」という場面がわんさか。
 しかし、まったく現実を描いてないかというとそうでもなし。ベンキョーになる箇所もないわけではなし。
 では、ギャグ自体がおもしろいかというと、(私ヌルボとしては)うーむ・・・。つまらないかと言われると、これまたうーむ・・・。

 たしかに<NAVER漫画>では高ポイントだし、たとえば<Y&S2女子のふんわか生活共感>という韓国ブログ(→コチラ)では激賞・推薦しています。
 社会の不条理と不合理性の中で、商人の真正性のようなものをひそかに表わしている。
何も考えずに笑おうとして読んだコミックにこんな内容を入れると重くておもしろくないんじゃないのと思いますが、ストーリーにうまく混ぜられていて、ぜんぜん負担がないというのがキム・ギュサム漫画の魅力だ。

 ・・・とか、
 ホントに、現実にはありえないような事件の展開で、最後の逆転までずいぶん笑った後、何か少し考えるようになったというか...
 ・・・とか。まあ、他の多くの読者もおもしろく読んだから高ポイントになってるわけで、同様の感想が多数あるということでしょうね。

 しかし、笑いのツボというのは個人によりor世代によりor国により等々さまざま。
 ヌルボの場合、1970年代後半の代表的ギャグ漫画の「がきデカ」はおもしろいと思いましたが、同じ「少年チャンピオン」に連載されていた「マカロニほうれん荘」の方は「???」でした。
 で、この「安いです 千里馬マート」も、ストーリー性はあるとはいえ、笑いの質からいうと日本ではその頃あたりからよくみられるようになった不条理ギャグ漫画と重なるところがあるようです。

 書く順序を間違えたかも。
 ここから具体的な内容の一部を紹介します。

 主人公その1は、企業グループの有能な重役(だった)チョン・ボクトン。
 ある日の重役会議で、会長が自分が発案した車用ワックスを新製品として提案します。それは「塗ると毛が生えてくる」というなんともキテレツなワックス。皆内心あせりながらも、「さすがは会長!」とか「大当たり(テバク)しますよ!」とか心にもないおべんちゃら。その中で「ダメです!!!!」と待ったをかけたのがこのチョン・ボクトン。「会長さん、しっかりしてください。売れませんよ、こんな物!」と直言。
 すると会長、「チョン・ボクトン、おまえはなんと・・・立派なんだ!!」。
 アララ。つまり、老衰したとか痴呆症になったとかいう噂も立ち、経営権まで狙う勢力もあるような中で、最後まで自分に直言をして補佐してくれる人物が誰か見定めたいという会長の策略だったんですね。
 ここで会長とチョン・ボクトンが固く抱き合い、他の重役たちががっくりしているところへ、「会長様、大事件です!」とドアを開けて入ってきた社員。
 「ライバル社が毛が生える車用ワックスを発表しました。市場の反応は大変なもので株価は暴騰、16ヵ国から注文が入ったそうです!」。
 そして「このままだとわが社のシェアは落ち込むでしょう」。
 ・・・これでチョン・ボクトンは左遷され、その先は大馬グループ内で<流刑地>といわれるソウル近郊の鳳凰(ポンファン)市(←架空)の千里馬マートの社長に追いやられるのです。

 主人公その2が青年ムン・ソック。名門大を出たのになかなか就職ができず、苦労の末屈指の大馬グループに就職して喜ぶのですが、初出勤で行った先がここ。

         
  【千里馬マート(左)。宣伝文には「向かいのマートで夏の大セール」等々書かれています。右は本家?平壌の千里馬像。】

 宣伝の文言には、「向かいのマート(店名はヒドラ・マート)より安いです。安物買いの銭失い」などとも・・・。
 マートの雰囲気もなんだかヘン。彼は店長になったのですが、不安と疑問が募る・・・と、そこに社長としてやってきたのが彼もその名を知っていたチョン・ポクトン。
 ムン・ソッキは喜びます。が、そのチョン・ポクトンも社長室で何か書類を書いてるかとみると「会長、18世紀ブラジル、死ねㅋㅋㅋㅋ」などと書き連ねていたりしてかなりヘン。

 まもなく新社員をどんどん採り始めるチョン・ポクトン社長。
 ところが、どうみても問題外の希望者に次々に「採用!」を連発していきます。ムン・ソッキ店長は呆然とするばかりです。

     
 【いつも無表情のチョン社長(上)、履歴書も持たずに来たヘヴィメタ系バンドをやってる若者(下左)を採用。あせるムン店長。】

 もっといいかげんな採用例は、就職希望者でもない、「ここで買った魚を食ったら首にブツブツができた」と苦情を言いに面接中の部屋に怒鳴り込んできたチンピラをなんとその場で採用決定(!)。(その彼が顧客満足センター担当をリッパに務めるのです。

     
 【そのチンピラ社員が出した広告用スローガンの案は、「わが町内の割引犯(핳인범.ハリンポム)、千里馬マート」。】

 上は殺人犯(サリンポム.살인범)のダジャレですね。

 このチンピラりもさらにありえない!という新社員(たち)がアマゾンからやってきたという40人ものパヤ族たち。白人たちが森に火を放ち、自分たちは追われて丸太でここまで泳いで来た、と・・・。これも全員即採用。

    
       【入口で客を迎える・・・っても、この「なり」でねー。】

    
       【そして、「人間バスケット」として客について行って・・・。】
    
    【「これがピラニアで・・・」等々、商品の説明もしたりして、すこぶる好評。】

 この漫画、韓国ウィキペディア(→コチラ)にもいろいろ詳しい説明が書かれているし、<エンハ・ウィキ・ミラー>(→コチラ)にはさらにオタクっぽい説明がたくさん書かれています。
 それらによると、実はチョン・ボクトンが会長への復讐のつもりでグループにダメージを与えようとして常識外れの人事やその他の施策を打ち出したら、「意に反して」大当たりし、どんどん営業成績を伸ばす結果に・・・、というのが物語の骨格なんですね。

 初めの方で、私ヌルボはなんとも感想が言い難い、と書きました。結局は「評価放棄」とします。

 実はこの作品を含む韓国NAVERで人気の無料漫画アプリがあるんですねー。
 ヌルボはスマホの使い手ではないので今ひとつどんなものかよくわかりませんが、→コチラとか→コチラを参照してみてください。
 また、読んでみたという月猫さんの一昨年のブログ記事(→コチラ)によると、「安いです、千里馬マート」「ペットダイアリー」「俺たちの青き時代」「ミステリー短編集―逆さに浮かぶ月―」がオススメとのことです。

 興味のある方はちょっと見てみてください。

 うーむ、私ヌルボ、スマホはあまり持ちたいという気にはなりませんが、世の趨勢を見るとだんだん持たざるをえないような圧力を感じざるをえません。年を取るにつれ、もうこれ以上新製品なんかはいらん!という気持ちが強くなっているんだけどねー・・・。
コメント
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