ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補) [15]

2013-11-17 18:01:33 | 高校生にすすめる本360冊
今回から単行本。3回に分けてアップします。今見直してみたら並べ方がいいかげんで、全71冊のうち最初の方の42冊は内外の文学、伝記、ノンフィクション等々ジャンルがかなりいいかげんに混じりあっていることに気づきました。

 ☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
     [単行本]  

290
エンデ果てしない物語岩波書店290・291=非常に読みごたえのあるファンタジー。なぜ書店では児童書の棚にしか置いてないのか? 290は装丁も凝っている。高いのだけが(大きな)難点。(2800円!)
292=砲弾の直撃を受けて左右半々になった騎士が一人の女性をめぐって決闘するという荒唐無稽さが楽しい。この「文学のおくりもの」というシリーズには、「たんぽぽのお酒」(ブラッドベリ)などヤング・アダルト向き名作が多い。
293=これぞ泣きます、泣かせます! なぜ早く文庫にしないのだろう? とにかくリクツ抜き、絶対おすすめ。読んでネッ!!
294=アフリカの神話的・呪術的世界。さまざまな魔物が潜む森。不思議な出来事が次々に展開されてゆく。
295=ノアの方舟等々さまざまな物語の宝庫。できれば文語訳で読んでほしい。(美しい日本語の典型。)
296=戦中のハンガリーを生き抜く双子の少年の衝撃的な物語を特異な文体で綴る。続巻・続々巻での意外な展開は驚き。
以下は308まで少年少女向きの売場にある本。
297=日中戦争下の中国を日本人少女の目から描いた、非常に感動的、かつ考えさせられる作品。
298=カリブ海の島国ハイチの独立をめざす闘い。中央志向・欧米志向・メジャー志向では、致命的な見落としがある。
299=「偉大なる道」(岩波)で知られるアメリカの女性作家スメドレーの伝記。翻訳の石垣さんも昭和初期若くして渡米した先進的女性。自伝に「わが愛、わがアメリカ」(ちくま)がある。
300=暴君として有名なネロの実像。彼も弱さをもった人間だった。
301=明治の思想家中江兆民を通して、人の権利や、国家権力との関わりなどについて考える。
302=ハンガリーの作曲家バルトークのピアノ曲や弦楽四重奏曲に十代の私は大大大衝撃を受けた。ナチスの手を逃れて亡命したアメリカで不遇のうちに病死とか。絶句!
303=前野良沢、杉田玄白等、蘭学者たちの労苦や権力の弾圧等を描いたこの本は本来の学問のあり方を追求し、感銘をよぶ。「初めて学問の意味を知った」とはある生徒の感想。
304=第一次世界大戦の捕虜として徳島に収容されたドイツ人たちと地元民の心温まる交流。読んだ人は皆泣いた。乞再刊!
305・306=民間考古学者の情熱に満ちた青春。この<ちくま少年図書館>というシリーズはどれもヒューマンな魅力に溢れる。
307=民間考古学者の元祖(?)、トロイの発掘で知られるシュリーマンの伝記。彼は6週間で新しい言語を習得し、計十余ヵ国語をマスター。方法は読めばわかるが、私には到底無理。
308・309=な、ぜ、か、社会科教科書にない部落差別の実態に愕然とする、と同時に、さまざまな意識の半生を迫られる。309は、被差別部落や在日朝鮮人が多く居住する地域の町医者の家に生まれた役者が体験をもとに差別を論じる。
310=韓国にも昔から<白丁>とよばれる被差別民がいた。原題を基点にした4代にわたるその一族の物語。
311=“加害者”自身が気づかない差別・迫害は学校にもある。“反抗的”で、孤立していた友の死をめぐり悩み、考える少年。
312=308等と相通じる問題を含む、ユダヤ人差別をテーマにした作品。主人公の設定等279(「あの頃はフリードリヒがいた」)と共通する点も多いが、これは19世紀、殺人の疑いをかけられたユダヤ人一家の物語。
313=両親は離婚。で、少年は作家ヘンショーさんに手紙を出す。深刻な問題だがユーモアと余裕が感じられほほえましい。

291
ル・グインゲド戦記岩波書店

292
カルヴィーノまっぷたつの子爵晶文社

293
キースアルジャーノンに花束を早川書房
294チュツオーラやし酒飲み晶文社
295
聖書日本聖書協会等
296クリストフ悪童日記早川書房

297
赤木由子二つの国の物語理論社
298乙骨淑子八月の太陽を理論社
299石垣綾子愛ある限り偕成社
300河津千代運命の人びとリブリオ出版
301なだいなだTN君の伝記福音館書店
302ひのまどかバルトークリブリオ出版
×
303
加藤文三学問の花ひらいて新日本出版社
☆×
304
棟田博板東捕虜収容所国土社
305藤森栄一心の灯筑摩書房
306楠本政助縄文人の知恵にいどむ筑摩書房
307ヴィーゼ夢を掘りあてた人岩波書店
308小林初枝こんな差別が筑摩書房
309山城新伍現代・河原乞食考解放出版社
310鄭東柱神の杖解放出版社
311コルシュノウ誰が君を殺したのか岩波書店
312フェーアマン隣の家の出来事岩波書店
313クリアリーヘンショーさんへの手紙あかね書房


 「アルジャーノンに花束を」はその後まもなく文庫本になりましたね。 その一方で、とても良い本なのに絶版になってしまった本もたくさんあるのは残念。

 最近アマゾンのサイトを見てみたら、<オールタイムベスト小説100>というのがリストアップされたました。(→コチラ。)

 この<高校生にすすめる本360冊>にも含まれているのが13作品。比較的に新しいものが多いので、まあこんなものかな?
 その小説100の中で、ヌルボが読んだものはちょうど半分くらい。まあそんなものかな?
コメント (2)
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最近の韓国、なぜか80~90年代の名作映画の再上映ブーム その背景は?

2013-11-17 06:31:57 | 韓国の文化・芸能・スポーツ関係の情報
 1つ前の記事で<책받침녀(下敷き女)>のことを書きました。
 横浜市立図書館で見ていた11月9日付の「朝鮮日報」の<오싱•라붐•레옹•터미네이터… 너희들 갑자기 무슨 바람이야>という見出しの記事の中にあった言葉です。
          

 訳すと<「おしん」「ラ・ブーム」「レオン」「ターミネーター」…アンタら急にどうした風の吹き回しなんだ?>
 つまり、最近韓国で相次いでいる主に80~90年代の懐かしの映画の再上映の状況と、その背景を考察した特集記事です。
 <책받침녀(下敷き女)>も、「ラ・ブーム」で人気となったソフィー・マルソーを指す言葉として出てきたというわけです。

 私ヌルボも、毎週火曜日に連載している韓国内の映画興行成績の記事を作成する中で、昨年来、とくに今年に入って往年の人気作品が次々と上映され、また好評であることに気はついていました。

 この「朝鮮日報」の記事であげられている作品は以下の通りです。
  ※この記事は→コチラで読めますが、会員登録(無料)が必要。

 「おしん(오싱)」 ※(1)・「Love Letter(러브레터)」(1995)・「ラ・ブーム(라붐)」(1980) ※(2)・「スチューデント(유 콜 잇 러브)」(1988)「ニュー・シネマ・パラダイス(시네마 천국(シネマ天国)」(1988)「恋する惑星(중경삼림.重慶森林)」(1994)・「愛人/ラマン(연인)」(1992)・「八月のクリスマス(8월의 크리스마스)」(1998)・「ターミネーター2(터미네이터 2)」(1991)・「レオン(레옹)」(1994)
 ※(1) 「おしん」は1984年韓国語版書籍が6巻で刊行。韓国版映画は1985年監督イ・サンオン、おしん役イ・ミニ(김민희)等で公開。この映画では、おしんは朝鮮人の少女となっていて、貧しい家の口減らしのため日本人の家に送られる、という設定になっている。詳細はいずれ別記事に(?)
 ※(2) →コチラによると「ラ・ブーム」は韓国では公式には公開されていなくて、1986年「ラ・ブーム2」が公開されて「ラ・ブーム」の存在が国内に知られるようになり、その後ビデオテープとTVを通じて韓国の観客はこの映画に出会うことができた、とのこと。

 これら以外でも「アメリ(아멜리에)」・「ジュラシック・パーク(쥬라기 공원)」・「タイタニック」・「慕情(모정)・「ウェストサイド物語(웨스트 사이드 스토리)」・「グラン・ブルー(그랑블루)」・「サウンド・オブ・ミュージック(사운드 오브 뮤직)」・「ドラゴン怒りの鉄拳(정무문.精武門)」等が再上映されています。

 上記作品の中には今年5月7日の記事でも書いた名画座のシルバー映画館での上映作も混じっていますが、それだけでなくロッテシネマ系列等相当数の映画館で上映されているのです。

 私ヌルボは、韓国は日本同様の高齢社会の上、最近は1960年前後生まれの韓国でのベビーブーム世代も引退を迎える時期となって、昔を回顧する彼らが主な観客層かな、となんとなく思っていました。
 ところが「朝鮮日報」の記事によると20代の観覧客の割合が非常に高いとのことなのです。
 今年再公開の映画6編の前売り状況の調査結果では20代が32%、30代が37%で、計約7割。「レオン」と「八月のクリスマス」では20代の前売り率が50%を超えたとのことです。

 このようなブームの背景について、大学の教授や評論家は次のように分析してます。

・10〜20代の若い世代がこれらの映画にひかれるのは、疲労感を感じる現実の競争社会からの避難所を探すためである。特に義理人情などに裏打ちされた人間関係に安定感を感じる。
・今は感動がない時代。アイドルやマクチャンドラマ(事故や不治の病、意外な血縁関係等「お約束」の展開のドラマ)は溢れているが、癒しは得られない。「おしん」や「Love Letter」は涙を流し、感動したい、人生の希望を得たい、という願いに応えてくれる。
・"英雄の不在"という現実が1980〜90年代を呼び起こしたという見方もある。今は大衆文化の洪水の時代とはいえ、 "本当の英雄"、"本当のレジェンド"は見つけがたい。チョー•ヨンピル、ユン・ボッキ、パティ•キム等は本物のスターだった。彼らは経済成長と相まって将来のビジョンを提示し、文化を導いていった。この頃は未来にバラ色の夢を描きにくい時代なので、過去にそうした夢を投影している。。

 スマホとは無縁だった頃のアナログ時代の恋愛に純粋さを感じる、という感想もあります。「八月のクリスマス」での手紙をめぐるいろいろや、「Love Letter」にもありましたね・・・。
 ある評論家は「今、私たちは切なさ(애틋함)への渇望、人間らしかった時代の欠乏などの情緒欠陥障害を抱えている」とコメントしています。
 そういえば、昨年ヒットした「建築学概論」も時代設定は現在ですが、90年代の学生時代の恋愛に基づいた物語で、同じテイストがありますね。

 「朝鮮日報」の記事では、このような「映画界の中の'過去探し(과거 찾기)'ブームは、2011年に観客750万人を動員した映画「サニー 永遠の仲間たち」がその始まりと見ています。1970年代を描いた作品で、家族対象の映画として若い層も見たため"新復古族(신복고족)"が現れ、その後彼らの好みに合う映画の上映が続いた、というもの。
 また、このような胸がジーンとなるアナログ的純愛ブームは10年あまり前、日本でも同様の現象があったとか。「世界の中心で、愛をさけぶ」のことかな? 「ALWAYS 三丁目の夕日」も?

 韓国社会を見ていると、以前の日本と同じ道を歩んでいるな、と思うことが多々あります。私ヌルボの持論で<日韓を分ける24年差の歴史>というのがありますが(→コチラコチラ)、この過去の名画ブームもそうかもしれません。ただ、年差は10年くらいに縮まっているのかな?
 それから、韓国のDVDのレンタルショップ事情はどうなっているのかな、ということも考えましたが、その点については私ヌルボ、よくわかりません。
コメント (2)
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