学問空間

【お知らせ】teacup掲示板の閉鎖に伴い、リンク切れが大量に生じていますが、順次修正中です。

「歌会始」の政治力学

2017-01-16 | 歌会始
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 1月16日(月)21時35分16秒

>筆綾丸さん
>「咲きのぼる」
勅撰集にはなさそうですね。
ただ、いかにも明るく華やかで、新春にふさわしい表現ですね。

篠弘氏は、歌人としての才能はともかく、ある種の政治的な能力に秀でた人ではあるのでしょうね。
私も短歌結社の世界など全く知らないのですが、歌人の内野光子という方は昨年の歌会始について次のように書かれています。

------
「歌会始」の政治力学
もう、ここでは詳しく繰り返さないが、歌壇における「歌会始」への無関心という状況は、あくまでも表面上のことであって、水面下では、ヘゲモニーをめぐっての過酷な争いが展開しているとみてよい。いや、ある友人によれば、すでに決着がついたのではないか、とも言われている。実にくだらないことながら、選者の出身結社ないし師の系統図からみて、かつては、少なくとも、2000年前後までは、 良くも悪くも、バランスがとられていた。その出自は、アララギ系(アララギ、未来)、佐佐木信綱系(心の花)、窪田空穂系(まひる野)、北原白秋系(コスモス)、太田水穂系(潮音)、尾上柴舟系(水甕、創作)、前田夕暮系(詩歌、地中海)、釈迢空・岡野弘彦系などに分かれていた。しかし、現在は、そうした結社の違いが薄弱になっていく一方、逆に、「選者」になることは、選者自身の歌壇上のステイタス、短歌メディアへの影響力を強固にし、自らの結社の会員獲得のいわば「広告塔」としての役割をいっそう強めている。


実は前回投稿の六首のうち、二首目はここに出てきた「政治力学」という表現を借りました。
内野光子氏も相当に政治的に熱いタイプのようで、ブログに散見される「天皇制」への憎悪にはいささか辟易しますが、近年の歌会始選者のバランスの悪さについては同意せざるをえないですね。
内野氏の別のブログ記事には、

-------
 きのうの「しんぶん赤旗」(2015年12月28日)によると、また、一つのサプライズがあった。短歌という狭い世界の話になるが、来年から赤旗「歌壇」の選者の一人に今野寿美がなったというお知らせである。私としては「ああ、やっぱりここまで来たか」との思いなのである。これまで、私は、著書やこのブログ記事でも「歌会始」が、「歌会始」の選者たちが、表に裏に、日本の歌壇をいかに牽引してきたかを、幾度も述べてきた。それは、やはり、現代短歌が当然のように「天皇制」の呪縛から解かれていないことを意味していた。今野寿美は、今年2015年の歌会始の選者として、2014年に、岡井隆の辞めたあと、代わる形で就任していた。すでに2008年からの歌会始選者、三枝昂之の妻である。夫婦での選者は永田和宏・河野裕子に次いで、2例目であった。その今野寿美が赤旗「歌壇」の選者になるという。歌会始の選者が赤旗「歌壇」選者になるのは初めてのことだ。これは、「赤旗の勝手、今野寿美の勝手でしょ」で済む問題なのだろうか。


とあります。
まあ、私は赤旗「歌壇」などには何の興味もないので、今野寿美氏がその選者になろうがどうでもよいのですが、今野氏と三枝昂之氏が夫婦で歌会始の選者になっていて、しかもそれが「永田和宏・河野裕子に次いで、2例目」というのはずいぶん奇妙、というか異常な感じがしますね。

内野光子(1940-)

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

お題ー表は野、裏は玉 2017/01/16(月) 16:08:06
小太郎さん
ここ数年の篠弘の歌をみると、心を(あるとして)病んだ老耄という以外、ほとんど意味のない人ですね。歌壇の政治力学によるのか不明ながら、なんでまたこんなのを撰者に据えておくのか、宮中の深い闇のひとつではありますね。

狂歌並びに反歌二首

ひがしがた 総玉砕 ノモンハン 外蒙古出身 春日野部屋

春の夜の 梅の匂ひに さそはれて タマを殺がれる 野良猫の恋

玉かぎる きのふのゆふべは あるものを 涙にかすむ 野辺の送り火

皇后陛下は相変わらず巧みな歌詠みで、天皇陛下の歌は邯鄲の枕を踏まえつつ、あれから四半世紀あまり、夢幻の如くに abdication は近づきぬ、というような思いが虫の音に仮託されているのでしょうね。

召人の久保田氏は定家研究でも著名ですが、「咲きのぼる」という歌語ははじめて知りました。何時頃からあるのかしらん。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 歌会始選者・篠弘さんに捧げ... | トップ | 「空想の建築―ピラネージから... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

歌会始」カテゴリの最新記事