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『篠弘歌論集 歌の挑戦』

2015-01-16 | 歌会始
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 1月16日(金)10時16分27秒

>筆綾丸さん
篠弘氏には『篠弘歌論集 歌の挑戦』(国文社、1979)という著書があって、「現代短歌の起点から戦後表現の結実まで、その渦中に生まれた前衛短歌の論争の数々を摘出し、新たな現代短歌の視点を探」っているそうですね。
まあ、理屈はいろいろあるのでしょうが、八十過ぎての実作がことごとくつまらないので、わざわざ歌論を読んでみたいという気分にもなりません。
ということで、"A rolling stone gathers no moss"の原義とは少しずれるかもしれませんが、ロックな篠弘氏に捧げる歌を一首。

六十年前衛歌人を続ければ転がる石にも苔は生えけり

『篠弘歌論集』

>『東アジアのなかの建長寺ー宗教・政治・文化が交叉する禅の聖地』
未読ですが、村井章介氏を筆頭に、これだけの豪華執筆陣を集めた512ページの論文集が3500円(税別)というのは驚異的ですね。
お金持ちの建長寺がスポンサーなので個別の採算は考える必要がないのでしょうが、反面、この種のスポンサー付きの本は全くの自由放任という訳でもなく、スポンサー側の積極的干渉はないとしても、執筆者の方に多少の遠慮は働きそうですね。
ご指摘の橋本雄氏の記述にしても、あるいは「大人の事情」の反映なのかなあ、という感じがしないでもありません。
ま、私は個人的に蘭渓道隆は、良く言えば外交官的、悪く言えば多少胡散臭いところがある人物と思っており、また、時頼遺偈も没後に時頼の生涯を荘厳するために作られた伝説と考えていて、総じて建長寺は怪しい寺だと思っているので、ちょっと深読みに過ぎるのかもしれませんが。

蘭渓道隆の適当な夢語り
二神約諾神話

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

蘭渓の業鏡 2015/01/15(木) 20:13:35
小太郎さん
歌人としての美智子さまは、場所柄を弁えぬ古本市の駄歌に呆れているけれども、皇后の立場からは何もいえない、ということかと推測しますが、篠弘氏にはその程度の想像力すら欠落しているらしく、哀れといえば哀れな老人ですね。

http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100397
『東アジアのなかの建長寺ー宗教・政治・文化が交叉する禅の聖地』をパラパラ捲っていると、
彭丹氏のコラム「道隆出蜀」に次のようにありました。この禅僧がなぜ「蘭渓」などというキザな名をつけたのか、以前から気になっていたのですが、なるほど、素朴な命名だったのですね。
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禅僧蘭渓道隆が生まれた西蜀涪州(ふしゅう)という地は、重慶の涪陵(ふりょう)万松村にある。この地に一本の河が流れている。上流は芝蘭河、下流は魚渓河と呼ばれる。芝蘭河と魚渓河それぞれ真ん中の一字を取り出して「蘭渓」となる。すなわち、道隆の「蘭渓」号の由来である。(148頁)
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橋本雄氏「北条得宗家の禅宗信仰を見直す―時頼・時宗と渡来僧との交際から」に、次のような記述があります。
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業鏡高懸  業鏡高く懸かること
三十七年  三十七年
一槌打砕  一槌に打砕すれば
大道坦然  大道坦然たり
この偈は、鷲尾順敬氏により、阿育王山の笑翁妙堪の遺偈の「七十二年」を「三十七年」に変えただけのものだとすでに指摘されている(括弧内省略)。だが、仮にそうだとしても、時頼が「大道坦然」の境地に満足していたことだけは恐らく疑いがない。歿時に遺偈を著わすということ自体、まさしく時頼が禅者として生きていたことの証だといえよう。(255頁)
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この遺偈は、高橋慎一朗氏の『北条時頼』(人物叢書)でも話題になりましたが、橋本氏の解釈は、良く言えばウブ(ナイーヴ)で、悪く言えばなんだかわかりません。「大道坦然」の境地に悟入していたかどうかはともかく、「大道坦然」の境地に満足していたことだけは恐らく疑いがない、とは一体何のことなんだろう? なぜそんなことが言えるのか。廻国巡錫中の最明寺入道も鉢の木で暖を取りながら吃驚しているのではないか。蛇足ながら、業鏡高く懸かること、という訓読はどうも変で、業鏡高く懸ぐ(こと)というように、懸の字は他動詞と訓むべきなんじゃないか。
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