学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

駄場裕司氏『後藤新平をめぐる権力構造の研究』

2014-03-11 | 石母田正の父とその周辺
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年 3月11日(火)22時32分45秒

東日本大震災から三年目、今日だけは人の悪口を言ったり、むやみに批判したりしないで大人しくしていようと思って過ごした一日でした。
明日からまた通常運転です。

>筆綾丸さん
後藤新平については、ずいぶん昔に北岡伸一氏の『後藤新平 外交とヴィジョン』(中公新書、1988年)を読んで、それなりに感激したことがあります。
また、今回、後藤新平伯伝記編纂会『後藤新平』を少し見て、面白いエピソードが山のように溢れているのには感心したのですが、ちょっと出来過ぎではないか、何でもかんでも後藤個人の才能・人格的魅力に結びつけるのはどんなものか、という疑問も生じました。
そして暫く前から続く後藤新平ブームにはいささか胡散臭い面もあり、関連書籍は本当に玉石混淆ですね。
そんな中、たまたま手にとった駄場裕司氏の『後藤新平をめぐる権力構造の研究』(南窓社、2007年)は予想外の品質の「玉」であり、後藤新平が神話化された背景事情が詳しく書かれていて、非常に興味深い本です。
かねてから疑問に思っていた後藤の阿片利権と星製薬の問題、特に星一の息子、作家の星新一が『人民は弱し 官吏は強し』で描けなかった問題の核心部分はかなり明確になっているようですし、昔、少し調べようとして全然把握できなかった玄洋社の杉山茂丸の動向、更には「講座派三太郎」の一人である平野義太郎をめぐる共産党関係者の不可解なタブーなど、面白そうな材料が山のように積み上げられています。
昭和研究会がらみで志賀直方も登場してきますね。
ここまで刺激されると、参照されている文献を片端から読みたい欲望に突き動かされるのですが、そうかといって後藤新平に深入りすれば去年末からやっている中世国家論の収拾がつかなくなりそうな予感もするので、ちょっと思案のしどころですね。

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『後藤新平をめぐる権力構造の研究』

「反米親ソ」の政治家・後藤新平。「右」は玄洋社から「左」は共産党まで、冷戦イデオロギーの闇に覆われていた後藤を取り巻く人物群像に照明を当て、いま、彼らが遺したものを考える。
目次
序論
第1部 「後藤閥」の成立前後(水沢時代から名古屋時代;内務省衛生局時代;台湾総督府時代―初期「後藤閥」の形成;満鉄時代;第二次桂内閣時代;第三次桂内閣時代;寺内内閣時代)
第2部 「後藤閥」と利権(星製薬問題;後藤・ヨッフェ交渉前後の玄洋社・黒龍会;鈴木商店救済問題)
第3部 「後藤閥」の実態(第二次山本内閣時代;田中内閣と「後藤閥」の対立;後藤新平の左翼人脈)
第4部 後藤没後の「後藤閥」の消長(「国策通信社」設立過程と「後藤閥」;昭和研究会への結集)
結論
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784816503542

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7214
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