学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

速水融・宮本又郎編『日本経済史Ⅰ 経済社会の成立 19-18世紀』

2017-08-21 | 渡辺浩『東アジアの王権と思想』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 8月21日(月)11時01分31秒

9月に入ったら怒涛の更新を行なうつもりですが、今暫く、シェークスピアなどを読みつつ、栄養補給を続けたいと思っています。
備忘のため、補足的なことをいくつかメモしておきます。

7月20日の投稿「『江戸日本の転換点─水田の激増は何をもたらしたか』の位置づけ」において、

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速水融・宮本又郎編『日本経済史Ⅰ 経済社会の成立 19-18世紀』は未読であり、念のため後で内容を確認してみようと思いますが、三十年も前の本を「現在の日本経済史研究」の「代表」としている点だけでも、カルベ教授の浮世離れの程度はひどいですね。


などと書いてしまったのですが、実際に同書を手に取ってみたところ、非常に良い本でした。
同書は岩波書店から刊行された『日本経済史』全8巻の一冊で、速水氏の『歴史人口学で見た日本』(文春新書、2001)にも、その出版の事情について簡潔な説明があります。(p84以下)

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 この間、昭和四十六(一九七一)年には数量経済史研究会(QEH)が発足した。この研究会は、新しく統計数字をきちんと使って日本の経済史を見直すという人たちが集まった会で、なかには経済発展論をやる人や経済史をやる人がいて、私はだいたい人口を受け持ち、ある人たちは物価を受け持つというように、毎年一回研究会を開いた。その結果は『数量経済史論集』(日本経済新聞社)というかたちで何冊か出版されている。そこでは伝統的な日本の経済史とは違う新しい手法をお互いに理解し合い、盛んな議論が行われた。日本の経済史研究のなかにもそういう変化が生まれてきたのである。
 岩波書店から『日本経済史』というシリーズが八冊出ている(一九八八~九〇)のも、このQEHの成果である。このシリーズはすでに中国語に訳され、近く英語版も出る予定で、世界中の人たちが読むところまで来たことになる。
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さすがに三十年間前ですから、専門家が見れば若干の補充をしたい部分もあるのでしょうが、基本的な問題意識が極めて明確なので私のような素人にも分かりやすく、また古臭い印象は全くない、というか今でも非常に新鮮ですね。

ところで速水融氏は東畑精一の甥ですが、東畑精一の『私の履歴書』(日本経済新聞社、1979)に「ハルナック夫妻─ウィスコンシン大学の思い出」というエッセイが載っていて、意外なところでハルナックの名前を目にしました。
といっても、このハルナックは鴎外の『かのやうに』や深井智朗氏の著作に登場するアドルフ・フォン・ハルナックではなく、その甥のアルウィッド・ハルナックなのですが、話は少し長くなりますので、改めて投稿します。

五條秀麿の手紙(その1)
五條秀麿の手紙(その2)
「かのやうに」とアドルフ・ハルナック
『ヴァイマールの聖なる政治的精神─ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』

>キラーカーンさん
こちらの投稿でしょうか。

>筆綾丸さん
ヨーロッパ、なかなか物騒ですね。

※キラーカーンさんと筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

若干の訂正(亀レス) 2017/08/17(木) 15:30:02(キラーカーンさん)
昔、「黙れ兵隊」に関連して、「国務大臣の数に上限はない」と投稿しましたが、内閣官制ではない別の勅令で、東条内閣総辞職時では、所謂無任所大臣は「四人」と決まっていました。
従って、この枠を使い切っていれば、誰かを辞めさせなければならないということになります。
(「内閣官制第十条の規定により国務大臣として内閣員に列せしめらるる者に関する件」原文は漢字片仮名交じり文)
当時、その枠を使い切っていましたので、無任所大臣での入閣では、誰かを辞めさせる必要がありました。
しかし、各省大臣を兼任している場合には、その枠を流用することも可能です。
例えば、現実的にはあり得ないですが、当時、東条が兼務している各省大臣(陸相、軍需相)を阿部と米内に与えれば、辻褄は合います(阿部は現役復帰が必要となりますが)。

記紀と源氏 2017/08/19(土) 12:55:59(筆綾丸さん)
小太郎さん
九月は初旬から月末まで旅行しているので、帰国後の楽しみにします。テロの起きたバルセロナも行きますが、プロテスタントの国としては、帰国便の関係でフランクフルトに立ち寄る予定です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E6%9C%AC%E7%BE%8E%E5%85%B8
計量文献学と言えば、安本美典氏の本を読んだことがありますが、内容は忘れました。

http://www.ipsj.or.jp/magazine/hakase/2014/CH01.html
むかし、『源氏物語』を計量文献学的に論じたものを読んだことがありますが、あまり感心できませんでした。
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