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峠にて

2018-11-08 | 松沢裕作『生きづらい明治社会』
投稿日:2018年11月 8日(木)20時16分57秒

ちょっと投稿に間が空いてしまいましたが、この掲示板で年内にどうしても纏めておきたいテーマがあることとの関係で、現在の話題についてどこまでやるか少し悩んでいるところです。
松沢裕作氏は『生きづらい明治社会』巻末の「参考文献」として、蚕糸業に関しては中村政則氏の『日本の歴史第29巻 労働者と農民』(小学館、1976)だけを挙げており、本文も中村著に全面的に依拠していますが、松沢氏の記述と直接関係する部分以外でも中村著は問題点が極めて多く、それを現時点での近代製糸業に関する研究水準に照らして全て検討するとなると大変な手間と時間がかかってしまいます。
そこまではとてもできそうもないので、製糸工女の長時間労働の実態については松村敏氏(神奈川大学経済学部教授)の「大正中期、諏訪製糸業における女工生活史の一断面─合資岡谷製糸会社の一、二の資料から─」(神奈川大学経済学会『商経論叢』35巻2号、1999)を少し紹介し、中村氏が「非人道的」と悲憤慷慨する諏訪製糸同盟の「権利工女」登録制度と「等級賃金制」については東條由紀彦氏(明治大学経営学部教授)の『製糸同盟の女工登録制度』(東大出版会、1990)を参考に少し論じる程度にしようかなと思っています。
また、諏訪の製糸業者と対照的に、郡是株式会社(グンゼ)の雇用関係は過度に理想化・賞賛されることが多かったのですが、その実態について詳しく検討された榎一江氏(法政大学大原社会問題研究所教授)の『近代製糸業の雇用と経営』(吉川弘文館、2008)も興味深い研究なので、余裕があれば少し紹介したいと思っています。
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