投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年 6月12日(火)09時47分9秒
今日の『河北新報』より。
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「鯨缶タンク」撤去へ 水産加工会社、被災者感情に配慮
東日本大震災の津波で流され、宮城県石巻市の県道に横倒しとなっていた缶詰をかたどった巨大なタンクが、今月末から解体されることになった。保存を求める声もあったが、所有する水産加工会社が被災者感情に配慮して撤去を決めた。
「木の屋石巻水産」の本社工場正面にあった鉄製タンクは高さ10.8メートル、直径9メートルで、飼料用の魚油タンクとして使用されていた。2007年に鯨大和煮の缶詰のデザインに塗り替えられ「世界一の鯨缶」として観光客らに親しまれていた。
震災で津波の直撃を受け、約300メートル離れた県道石巻女川線の中央分離帯に流れ着いた。震災遺構として注目されたが、被災者から「震災を思い出すので見たくない」との声も寄せられた。
解体したタンクの一部は、同社が市内と宮城県美里町に建設予定の工場のベンチなどに活用する考え。木村隆之副社長(57)は「会社にとっても大切なシンボルで、壊すのは忍びない。震災を風化させないよう、思いを込めて生まれ変わらせたい」と話している。
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/06/20120612t15012.htm
これ、法律的には物権的請求権の問題ですね。
津波という不可抗力により水産加工会社の所有地上にあった「鯨缶タンク」が宮城県所有の県道上に移動すると、宮城県は水産加工会社に対して、土地所有権に基づく物権的妨害排除請求権を有しており、「鯨缶タンク」を県道上から撤去せよ、と請求することができます。
逆に、水産加工会社は宮城県に対して、「鯨缶タンク」の所有権に基づく物権的返還請求権を有するのですが、問題の性質上、宮城県は「ご自由にどうぞ」と言うだけで、訴訟に発展するはずもないですね。
このあたり、理論的な枠組み自体は、放射性物質が「無主物」であるかどうかで争いになった二本松のゴルフ場裁判の場合と同じです。
「鯨缶タンク」は巨大なものだから、誰もそれが「無主物」だなどとは主張しませんが、だんだん小さくなって放射性物質レベルの極限的な小ささまで行ってしまうと、「無主物」だとの主張がおかしい訳ではないですね。
『ヴェニスの商人』と物権的請求権
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6292
「無主物」はオーソドックスな論理
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