歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

映画『希望の国』 ② 嘘は薄っぺら?

2012年12月10日 | 映画の話し
先日の続きです。

パンフレットを読みました。

やはり、映画は映画を観て、理屈抜きに、映画そのものから感じる事が大切で、観る前に、監督の意図とか、他人の感想とか、知ってしまうと、料金の半分ぐらいを損します。

自分でお金を払って観たのですから、その分、自分でいろいろと、自分なりの解釈、自分なりの感動、自分なりの疑問等を、いろいろ巡らすのが正解で、ボケ防止にも役立つのです。

それで、600円で買い求めたパンフレットを見終わってから読んだのです。

それで、園子温監督ですが、その筋では、それなりに有名な監督らしいのです。『冷たい熱帯魚』とか、『恋の罪』とか、『ヒミズ』とか、ヴェネチアとか、カンヌとかの国際映画祭で上映され、それなりに好評だったようです。

それで、今回の『希望の国』ですが、園子温監督は、

※以下はパンフレットより抜粋



『原発には、復興のめどがたたないう問題があるからです。原発は誰にとっても重要な課題だと思います。誰も知っている事柄を深く掘り下げたかったんです。原発事故によって一家離散した方の話しや、酪農家の方が自殺した話しはいろいろなところで報道されましたよね。ニュースやドキメンタリーが記録するのは情報です。でも、僕が記録したかったのは被災地の情緒や情感でした。それを描きたかったのです』



『・・・今回はセリフもシーンも、なるべく想像力で書くことはやめて、取材した通りに入れようと思ったんです。勝手に書いた嘘は薄っぺらだけですからね。空想して書くことは控えようと思いました』

『原発がいいか悪いかという映画を撮っても、それは映画としてあまり有効ではない・・・。映画はは巨大な質問状を叩きつける装置・・・。そこで起きていることを認識して、ただ映画にするだけで充分・・・。取材した場所の中には、もちろん壮絶な被害を被ったところもありましたが、一方ででとても落ち着いた場所もある。だから、センセーショナルなものとして描きたくありませんでした』

と、語っています。

それで、先ずは、“ニュースやドキメンタリーが記録するのは情報で”と語っていますが、その事は、情報は単なる出来事の表面的、眼に見えるモノの記録であり、その渦中に居た人間を描くことはできないとの主張のようです。

確かに、ニュースは速報性が命ですから、なかなか渦中の人間の思いを伝えるのは困難だと思います。

でも、ドキュメンタリーは速報性はそれほど求められていないので、私としては、ドキュメンタリーは事件、事故、あらゆる事象の渦中での、人間のあらゆる思いを描くのが、ドキュメンタリーだと思います。

ドキュメンタリーとニュースを一括りにして、単に眼に見えるモノだけの情報の記録としたら、ドキュメンタリーの映像作家が怒ると思います。

そして、その事は、当然な事として、園子温監督は“僕が記録したかったのは被災地の、人間の、「情緒や情感」でした”となるのですが。

まあ、当然、映画は、脚本があって、演出があって、俳優が演じて、一つのテーマを作品にする訳です。ある意味で“作りもの”であって、事実ではない訳です。

事実を積み重ねるよりも、作り物の方が、真実を、人間を、時代を、より鮮明に描くことが出来ると思うのです。だから、総合芸術の映画はすばらしいと思うのです。

でも、しかし、園子温監督は、

“今回はセリフもシーンも、なるべく想像力で書くことはやめて、取材した通りに入れようと思ったんです。勝手に書いた嘘は薄っぺらだけですからね。空想して書くことは控えようと思いました”と語っています。

作り物のセリフは、嘘で“薄っぺら”でしょうか? 薄っぺらだとすれば、作り物が原因ではなく、勝手に想像して書いた“想像の内容”の問題だと思います。

被災者にいろいろ取材されたようですが、被災者は表現者としては素人です。自分の想いをすべて、自分の言葉で的確に表現するのは困難だと思います。

言葉の意図を、言葉意外のところからくみ取り、的確な言葉で、的確な表情で、的確なシーンで、的確なカットで、的確な音楽をバックに、嘘を演じる事で、真実を描くのがプロの表現者の役割だと思います。

やはり、対象が原発だと云う事で、下手な想像では、嘘になると思ったのでしょう。

やはり、かなり、急いでいたと思います。

原発事故は、あまりにも、あまりにも、物理的にも、科学的にも、経済的にも、政治的にも、社会的にも、歴史的にも、思想的にも、巨大な出来事です。

もう少し、資金と時間があれば・・・との思いは、園子温監督に相当あったと思います。

何か、いろいろ、ケチを付けてしまいましたが、希望の国はお金を払って観ても、損はしない映画です。是非、映画館に脚を運んで下さい。




もう少し、「希望の国」の話しは続きます。


それでは、また。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする