鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1335~魂でもいいから、そばにいて

2017-03-10 12:31:15 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「魂でもいいから、そばにいて」です。

明日は3月11日。
近頃は、津波が街を飲み込むシーンや、原発が爆発するシーンを、テレビが取り上げています。
近親者に被災者がいなくても、あの映像を見るだけで、胸が苦しくなる方も多いのではないでしょうか?
これまで体験者へのインタビュー、再現シーン、科学で解明されたこと、今後の対策など、テレビだけでなく新聞や書籍などで接してきました。
そんな中で今回見かけた本は違うアプローチをしていました。
「魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─」
本書に納められた体験談は、遺族が重い口を開いて初めて語った話ばかり。
非科学的であることは百も承知。
誰彼かまわず話せば変人扱いされること、間違いなし。
でも誰かに聞いて欲しい、亡くなった家族との“再会”を。
決して面白半分の怪談話ではありません。
遺族の気持ちを理解しつつ、感動しながら読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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「今まで語れなかった――。でも、どうしても伝えたい」
そして、
〈誰にも書けなかった。でも、誰かが書かねばならなかった〉
〝不思議でかけがえのない物語″が、いま明らかになる!

あの未曾有の大震災から、今年で6年――。
その被災地で、死者を身近に感じる奇譚が語られているという。
最愛の家族や愛しい人を大津波でうしない、悲哀の中で生きる人びとの日常に、突然起きた不思議な体験の数々……。
《愛する亡夫との〝再会″で、遺された妻に語られた思いは……。
津波で逝った愛娘が、母や祖母のもとに帰ってきた日に……。
死んだ兄から携帯電話にメールが届いて……。
早逝した三歳の息子が現れ、ママに微笑んで……≫
だが、〝霊体験″としか、表現できないこうした〝不思議でかけがえのない体験″によって、絶望にまみれた人びとの心は救われたのだった――。
著者は3年半以上も、そのひとつひとつを丹念に何度も何度も聞き続け、検証し、選び出し、記録してきた。
「今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい」という遺族たちの思いが噴き出した、初めての〝告白″を、大宅賞作家が優しい視線と柔らかな筆致で描き出す!
唯一無二の〝奇跡″と〝再生″の物語を紡ぎ出す、感動と感涙のノンフィクション。

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亡くなった家族の霊について語ることはタブー。
変な人と思われてしまうため、普段は口にすることができません。
それは霊体験が非科学的だからです。
まえがきで本書を書くことをためらう著者に医者が語った言葉が紹介されています。
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患者が亡くなる時、42%もおむかえがくる。
決して再現や証明ができないがそれは事実。
再現や証明ができないから起きていないといえるのか?
科学として証明できないものの中にも真実はある。
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こうして著者は遺族の話を取材して歩きます。
変人と言われながら。

本書はつらい体験をされた方々の個人的な体験を綴ったものですから、軽々しく感想など書けません。
かわりに心に残った文章をいくつか引用して終わります。
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人は物語を生きる動物
不思議な物語は、他者に語ることで語り手が少しずつ変化を加えつつ、やがて自ら納得できる物語として完成するはず
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彼らが不思議な体験をするのは、亡くなったあの人を忘れたくないからであり、同時にそれが、死者の願いでもあることを知っているからだ
生者が死者を記憶に刻み続けることで、死者は生き続ける
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ある家の水道工事をしているときのことでした。
建主の奥さんが僕に「誰かそばにいるよ」って言ったんです。
「男の子かなあ? 悲しそうな顔で見ている。体壊すから、そんなに無理しないでって言ってるよ」って。
正直、あの頃は過労で死んでもいいかなという気持ちで仕事をしていたので、胸をえぐられた気分でした。
すると「お兄ちゃんがね、おら、大丈夫だから、心配しなくていいからって言ってる」と言われました。
広夢は自分のことは僕とか俺ではなく「おら」でした。
それを聞いて、俺はもうぼろぼろ泣いていましたね。
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