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ギリシャ神話あれこれ:ラピタイ族の戦い

 
 狭義のバロック(=「歪んだ真珠」)の名に最もふさわしい(と思う)ルーベンスは、「なんたらの略奪」というギリシャ神話の主題を好んで取り上げた。動的で肉々しい裸体の入り乱れるさまは、劇的で華麗で輝かしい。
 ……かも知れないが、くどい。ゲップが出ちゃう。ルーベンスって、ちょっとヘン。

 ペイリトオスはテッサリア、ラピタイ族の王。ケンタウロス族の祖イクシオン(彼はタルタロスで、火炎の車に縛められて回転している)とディアの子。
 アテナイの英雄テセウスの盟友として名高い。
 
 テセウスが荒牛を退治しにマラトンにやって来た際、ペイリトオスは彼の名声がいかほどのものかを試そうと、同じくそこにやって来たらしい。で、二人は出会い、互いの気高い風格に惚れ合って、友情の誓いを交わす仲になったという。
 ペイリトオスはアルゴー船の遠征や、カリュドンの猪狩り、アマゾン遠征など、テセウスと行動を共にした。

 さて、ペイリトオスがブテスの娘ヒッポダメイアと結婚した際、もちろんテセウスも祝宴に招かれた。このとき、テッサリアの山岳に住まう、ペイリトオスの親戚に当たるケンタウロス族も招かれる。
 ケンタウロス族というのは父イクシオンに似て、粗暴で礼儀知らずな上に、女好き。で、酒がまわるにつれて、徐々に下品な本性を現わし始め、散々乱れて女たちに絡んだ挙句、とうとう、すっかり酔っ払った一人が、花嫁ヒッポダメイアをさらっていこうとする。やだね。
 で、他のケンタウロスたちも次々と、手近な女たちに襲いかかる。やだねったら、やだね。

 こうなるとラピタイ族も黙ってはいない。ペイリトオスも同じイクシオンの子なわけで、結構荒っぽい。そこにテセウスも加わって、婚礼の場は突如、入り乱れての大乱闘となる。
 結局、ペイリトオスやテセウスたちは、ヒッポダメイアを取り戻し、さらに山岳へと逃げるケンタウロス族を追撃して殺害、ケンタウロス族を敗った。

 ところで、この戦いで、ラピタイ族のカイネウスが命を落とした。

 カイネウスは元来、カイニスというテッサリアの王女だったのだが、ポセイドンに犯されて、その償いに何でも願いを叶えてもらえることに。で、女などつくづく弱いもんだと思ったのか、彼女は、決して傷を負うことのない屈強な男にしてくれ、と願う。
 以後、カイネウスと名乗り、男ならではの様々な冒険を繰り広げた彼は、このとき、ラピタイ族として、ケンタウロス族と戦った。
 ケンタウロスたちに襲われたカイネウスは、確かに剣ではかすり傷一つ負わなかった。が、剣では歯が立たないと悟ったケンタウロスたちは、今度は彼の頭を丸太で叩き打つ。殴打に殴打を重ねて、彼の身体を地に埋め込んだ上に、丸太やら岩やらを山のように積み重ねたので、カイネウスはとうとう、息ができずに死んでしまった。

 画像は、ルーベンス「ヒッポダメイアの略奪」。
  ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens, 1577-1640, Flemish)

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