ロシア民話にはモダンな挿絵を

 
 
 ここ2、3ヶ月、なぜかロシア民話にハマッていて、図書館でせっせと本を借りてきては読んでいた。で、ビリービンの絵本を目当てに、かなり離れた図書館にまで遠征した。
 ロシアというのは実はお伽の国で、メルヘンチックな絵本にあふれているという。そんなロシアの絵本と言って私が思い出すのは、プーシキンやアファナーシェフの書いた民話に、ビリービンが挿絵を添えたもの。

 まだ人間のそばに魔物が住んでいた昔。動物が人間の言葉を話し、人間が動物に姿を変える。知恵と勇気と幸運で、世界の果てまで冒険する主人公たち。邪悪なバーバ・ヤガーや不死身のコシチェイ。魔法の馬、火の鳥、白鳥の姫君、……云々。
 これが挿絵では、人物たちはカフタンを着、サラファンを着、ルバーシカを着ていて、ロシアンな冠をかぶり、ロシアンな鎧をまとっている。背景にはロシアンな城、ロシアンな小屋、これらの建物にはロシアンな装飾がしてあって……
 挿画は物語の魅力を十二分に引き出し、百倍に膨らませている。

 ロシアの伝統文化が好きな人に対しては、鬼に金棒。いいな、ビリービン、もっとないかな、ビリービン……

 イワン・ビリービン(Ivan Bilibin)というのはロシアの挿画家で、セルゲイ・ディアギレフら率いる「芸術世界(ミール・イスクーストヴァ)」誌とその運動に参加した。かのレーピンのもとで絵を学んだ後、ミュンヘンにて、アール・ヌーヴォーに接し、アール・ヌーヴォーを擁護する「芸術世界」で舞台・装飾デザインを手がけている。
 が、彼の名声を決定づけたのは、ロシアの民話絵本の制作にて描かれた、一連の挿絵。ロシアの伝統的な民間芸術に魅了されていた彼は、ロシアのフォークロアを、アール・ヌーヴォー調の大胆で華麗なデザイン、優雅で繊細な線と渋く妙なる色調を用いた、独特の様式美で描いて成功した。
 イコンを思わせる民族的なモチーフの装飾枠を付けて描かれた、古い物語は、けれどもモダンで斬新で、今日でも古臭いとは思わせない。

 ロシア革命後、いったんは祖国を離れたビリービンだったが、郷愁の念は断ちがたく、ソ連へと戻っている。
 イラストの原画って、どこで観れるんだろう。ロシアに行けば、あるのかな。

 画像は、ビリービン「麗しのワシリーサより、馬上の黒い騎士」。
  イワン・ビリービン(Ivan Bilibin, 1876-1942, Russian)
 他、左から、
  「サルタン王の物語より」
  「麗しのワシリーサより」
  「麗しのワシリーサより」
  「カエルの王女より」
  「火の鳥と灰色狼より」

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