ギリシャ神話あれこれ:頑張れ、シレノス爺さん

 
 野球の実況中継中、ドラゴンズファンの相棒、打席に立ったベテラン谷繁を応援して、こう叫ぶ。
「頑張れ、谷繁爺さん! 頑張れ、シレノス爺さん!」
 ……相棒ちゃん、どうしてシレノス爺さん知ってるの?

 シレノスというのはギリシャ神話に登場する精霊。サテュロスによく似た、山野に住む半獣神の一族だが、ほとんど山羊のサテュロスとは違って、より人間に近く、馬の蹄に耳、尻尾を持つとされる。
 シレノス一族はみな年老いていて、ぺちゃんこの獅子っ鼻をした醜男だが、知恵深く、予言の力まで持つ。畢竟、サテュロスたちの親分格なのだが、サテュロスに輪を掛けた酒好き、騒ぎ好き、女好き。酔っ払うまで飲んでは陽気に歌い踊り、皮肉や風刺や洒落をぶっ飛ばす。

 そんなシレノスらの長老が、パッポシレノス(=シレノス爺さん)。背が低く太鼓腹をした禿頭の老人で、いつも酩酊している。
 比類ない知恵者シレノス爺さんは、酒神ディオニュソスを教育し、葡萄酒の秘技まで教え、放浪するディオニュソスに付き従ったという。

 シレノス爺さんを捕まえると、知恵を授けてくれるという。例えばミダス王が、人間の幸福について教えてくれ、と聞き出すと……
 人間にとって一番の幸福とは、生まれてこないことだ。生きるということは惨めで痛ましく、苦しいことだからだ。だが生まれてしまったのなら仕方がない、できるだけ早く、さっさと死んでしまうことだ。

 かの哲学者ソクラテスは、シレノスの容貌をしていたのだとか。ちなみに谷繁は、シレノスには似ていないと思う。

 画像は、ルーベンス「酔っ払ったシレノス」。
  ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens, 1577-1640, Flemish)

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