国境の街角再び(続々々々々々々々々)

 
 道端には、リヒテンシュタインの国章の標識が立っている。検問所に近づくにつれて、俄かにドキドキする東洋人二人。

 パスポート、チェックするのかな。スタンプ、押してもらえるのかな。……シミュレートするため、通過する車を、何気なく観察する。
 が、車はどれも、検問所で一旦、スピードを落とすだけで、そこを越えるとまた、すぐにビューンと走り去っていく。検問所に着いてみると、あれ? 誰もいない。無人なのかな。メーデーで休みなのかな。……何のチェックもなく、呆気なく国境を通過。

 国境を越えると、どことなく雰囲気が変わるから不思議。オーストリアものどかな田園だったが、リヒテンシュタインに入った途端に、のどかものどか、民家すら一切なくなってしまった。
 サイクリング・コースの農道に入って、道端にベタリと座って一休み。スイス・アルプスの雪山と、青い山々に囲まれた、一面の緑の草原。まばらに木立が群がり、白や黄の小さな花々が咲き覆う。名も知らない木の綿毛が、風に吹かれてフワフワと流れ飛んでいる。

「夢を見ているようだーッ!」と相棒が叫ぶ。
「人間がいない! どうやったら、リヒテンシュタインに住めるんだろう? 貴族になったら住めるのかなあ!」
 相変わらず、山に弱い奴だな。リヒテンシュタインって、カリオストロ公国みたいにのどかだけれど、スイスと同じくらい保守的な国じゃなかったっけ?
 あとで調べたら、リヒテンシュタインが女性参政権を認めたのは、1984年(ちなみにスイスは、1993年)。すっげー保守国家。

 さて、無事、リヒテンシュタインに足を踏み入れたのだから、これで相棒も満足して帰るのかと思いきや……
「でもねえ、あともう少し歩けば、スイスの国境も越えられるよ」

 信じられない、この男。

 To be continued...

 画像は、ルッゲルの田園。

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