国境の街角再び(続々々々々々々々々々)

 
 渋っている私を、相棒が地図を見せて説き伏せにかかる。
「ほら、あとこれだけ歩けば、スイスに行けるんだよ。じゃ、ずーっと向こうに教会が見えるでしょ、取り敢えずあそこまで行ってみよう、ね」
 ……旅は泥沼、人生も泥沼。

 そのまま農道をてくてくと歩いていると、やがて牛たちの群れが見えてくる。人が住んでないわけないじゃん。この辺りはやっぱり牧場なんだよ。白や黄の花々が咲いていない草原があるのは、牛たちが花を食っちゃったからなんだな、きっと。

 農道を抜けて車道に出る。車道の両脇は牧草地。柵の代わりにリボンのような帯がしてあって、触るとビビビッと来る。帯に細い針金が編み込んであって、そこに電流が流れている。これで家畜が道に出るのを防いでるんだ。
 農夫にいざなわれて牛たちが、首の鈴をカラン、カランと鳴らしながら車道を横断している。

 どうやらここはルッゲル(Ruggell)という町。町の中心に近づくにつれて、別荘やペンションが増えてくる。天気が好いので、みんな庭で食事をしたりビールを飲んだりしている。
 そろそろお腹空いたな。トイレにも行きたいし。延々と歩いて、もう3時頃だもんね。

 ようやくたどり着いた、あの教会で、しばし休憩。相棒の奴、何やら敬虔に祈っている。「何、祈ってんの?」と尋ねると、
「うん、マリアさまに、食事とトイレ、叶いますように、って」
 ……相変わらず、卑近なお祈りをしてくさる。

 ところで、見知らぬ女の子にいきなり、「携帯電話の番号、教えてください」と頼むと断られるが、「付き合ってください」と頼んで断られてから、「じゃあせめて、携帯電話の番号、教えてください」と頼むと、教えてもらえるらしい。
 同じ心理で、スイスが駄目なら教会まで、と言い張って私を教会まで連れてきた相棒。が、案の定、教会を出て、「ここまで来たら、もうスイスはすぐそこだよ」とせっつく。こうなったら、私も諦めておとなしくついていくことに。

 To be continued...

 画像は、ルッゲル、車道を横断する牛の群れ。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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