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魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-

 世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記

ギリシャ神話あれこれ:犬になったヘカベ

2014-02-22 | 僕は王様
 
 古来、黒猫は魔女の使い魔だという理由で厭われてきた、というのは、よく聞く話。が、私のなかではずっと、魔女に付随する獣は、黒猫ではなくて黒犬だった。
 けれども、よく考えてみると、黒犬は、魔女の使い魔ではなく、魔女そのもの、魔女の化身なのだった。
 私のこんな黒犬のイメージがどこから来たのかと言えば、子供の頃に読んだヘカベの物語に遡る。トロイア戦争後のヘカベについては、あれやこれやの別伝があって、もう何がどうなっているのやら……幼い私の頭は混迷を極めたものだが、ただ、ヘカベは犬になった、というイメージだけは一貫していたっけ。

 ヘカベはトロイア王プリアモスの正妻。つまり王妃。魔術を使えそうな雰囲気紛々で、パリスを産んだときにもトロイア滅亡の予知夢を見た、不穏で陰気な存在。

 さて、イリオス陥落の後、トロイア王家の女たちは、婢妾として、ギリシア軍の諸将らに分配される。王女カッサンドラは、総大将アガメムノンの愛妾、王子ヘクトルの妻アンドロマケは、アキレウスの遺児ネオプトレモスの愛妾に。王女ポリュクセネは、アキレウスの霊前への生贄に。
 そして王妃ヘカベは、オデュッセウスの戦利品に。

 ……え? なんでオデュッセウスだけ、ヘカベの婆さん? いくら王妃ったって、こんな婆さん貰ってもなあ。
 と思いきや。オデュッセウスとしては、戦中、乞食に化けてイリオスに潜入し捕獲された際に命だけは助けてもらった、その借りを、ヘカベを保護することで返したのだという。

 To be continued...

 画像は、ロマーノ「ヘカベの夢」。
  ジュリオ・ロマーノ(Giulio Romano, ca.1499-1546, Italian)

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ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-イタケその後

2014-02-20 | 僕は王様
 
 その後のオデュッセウスには、なくもがなの後日譚がある。

 オデュッセウスは、冥府にて盲目の予言者テイレシアスに命じられたとおり、生贄を捧げるために旅立ち、航海の末にテスプロティアへと到る。そして、その地の女王カリディケと結ばれ、息子ポリュポイテスを儲ける。
 が、戦争が起こり、カリディケは戦死。ポリュポイテスが王位を継ぐと、オデュッセウスはイタケへと戻ってくる。

 話は変わって、オデュッセウスがその昔、アイアイエ島に滞在した折に、魔女キルケが身籠ったテレゴノスは、キルケに育てられ、立派な若者へと成長する。槍術に長けた息子に、キルケは、毒を持ったアカエイの骨を削って穂先とした槍を与える。
 そしてある日、息子に、お前の父はトロイア戦争の英雄オデュッセウスなのだよ、と告げる。

 父に会いに行こう! テレゴノスは船を出して海を行く。が、途中、嵐に遭い、イタケに流れ着く。けれどもテレゴノスには、そこがイタケであることが分からない。
 空腹から、テレゴノスは牛を盗もうとし、それを阻んだ牛飼いの男を槍で突いて殺してしまう。が、この男こそ、父オデュッセウスその人だった。

 真実を知って悲嘆、悔恨するテレゴノスは、父の遺骸と、義母ペネロペ、異母兄テレマコスを連れて、母キルケの島へと帰ってくる。そこでオデュッセウスを埋葬し、キルケに父殺しの罪を浄めてもらう。
 その後、キルケは彼ら三人に不死を与え、テレゴノスはペネロペを妻とし、キルケはテレマコスを夫とした、という。

 ……なんという趣味の悪い四角関係。なんでやねん。

 画像は、ロセッティ「ペネロペ」。
  ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti, 1828-1882, British)

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     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-

ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-和解(続)

2014-02-19 | 僕は王様
 
 求婚者らの首謀格だったアンティノオスの父エウペイテスが、人々を煽る。かつてオデュッセウスが率いた船も男たちもすべて失われた。今また、我らの血族縁者が彼によって殺された。さあ行こう、あの男に復讐を!
 そこへ、楽人ペミオスと伝令使メドンがやって来る。人々よ、オデュッセウス王は神に背いて誅殺に及んだわけではない。彼の隣りには、メントルの姿を取った神がいたのだ。
 動揺し、恐怖する一同。老予言者ハリテルセスも説得する。こんなことになったのも、お前たちが倅どもの悪行をたしなめようとしなかった、お前たち自身の臆病のせいではないか。これ以上の災厄は招かぬがよい。と。

 が結局、求婚者の血族らは武具に身を固め、エウペイテスを先頭に、オデュッセウスに復讐すべく農園へと繰り出す。

 オデュッセウス一同も、武器を手に、血族ら一行を迎える。
 そのとき、メントルに化けたアテナ神が現われ、老ラエルテスに声をかける。さあ、槍を投げ放て!
 ラエルテスの放った槍はエウペイテスの兜を貫き、エウペイテスはどうっと倒れる。オデュッセウスとテレマコスが先鋒をなぎ払い、あわや血族らもまた殲滅という自業自得の事態かと思いきや……

 イタケの民よ、これにて戦いをやめよ! アテナ神が制する。
 これが神々の采配ならやむを得ん。こうしてオデュッセウスは、求婚者の血族縁者たちと和解する。

 To be continued...

 画像は、ドーミエ「寝台のなかのオデュッセウスとペネロペ」。
  オノレ・ドーミエ(Honore Daumier, 1808-1879, French)

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     Bear's Paw -ギリシャ神話あれこれ-

ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-和解

2014-02-18 | 僕は王様
 
 ところでオデュッセウスは、誅殺発覚までの時間稼ぎのため、ペネロペ婚礼の宴を装った。で、伝令神ヘルメスに連れられて冥府へと降り立った求婚者らの霊魂は、自分たちの自業自得の無残な死を、身内が知らないために、未だ屍が弔われていない、とキイキイ嘆く。

 その夜、オデュッセウスは寝物語に、冥府にて下されたテイレシアスの予言を、ペネロペに語って聞かせる。櫂を持って、海を知らない民の国まで行き、その手に持つのは殻竿か、と問われたなら、櫂を地に刺し、ポセイドン神に生贄を捧げなければならない、と。

 翌朝、オデュッセウスは父ラエルテスの農園を訪れる。葡萄畑で果樹の根元を耕す老父に、オデュッセウスは声をかける。
 例によって偽りの素性をペラペラと述べ立てていたのだが、ああ、本当にその昔、私に倅などあったのだろうか? とラエルテスが嘆くのを見て、オデュッセウスもたまらなくなる。父上! あなたの息子はこの私なのです! と父に抱きついた。
 
 この頃になってようやく、求婚者らの死の噂が町中に広がり出す。人々はオデュッセウスの屋敷を訪れ、身内の骸を引き取ると、寄り集まって相談を始める。

 To be continued...

 画像は、カウフマン「エウリュクレイアに起こされるペネロペ」。
  アンゲリカ・カウフマン(Angelika Kauffmann, 1741-1807, Swiss)

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ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-求婚者誅殺さる(続々々)

2014-02-17 | 僕は王様
 
 さて、オデュッセウスは乳母エウリュクレイアを呼び、裏切り者の侍女は誰かを尋ねる。乳母が名を上げた十二人の侍女らが呼び出され、泣きながら、求婚者らの死骸を片づけさせられ、血まみれの広間を洗わされる。その後、侍女らは、一列に首を吊るされて処刑される。
 続いて、山羊飼いメランティオスが引きずり出されると、耳と鼻を切り落とされ、男根を毟り取られ、手足をもがれる。
 ……貴族はあっさり殺してもらえるのに、下僕や下女は身分が卑しいためか、苦しんで殺されなきゃならない。

 さて、後始末が済むと、オデュッセウスは硫黄を火にくべて屋敷を浄めさせる。やがて忠義な侍女たちが部屋から現われ、どっと主人に駆け寄って、彼の帰還を喜び迎えた。

 乳母エウリュクレイアは、部屋で眠っているペネロペを起こし、オデュッセウスが帰還し、求婚者どもを一掃してくれた、と知らせる。が、ペネロペは信じようとしない。そんなひどいでたらめで私を苦しませないでおくれ。

 一方、オデュッセウスは湯浴みをし、衣装を着替えて、すっかり美しいいでたちに。ペネロペは、この殿方のために、主人の寝室から寝台を運び出して、広間に寝床を用意するように、と乳母に言いつける。
 ガーン、お前、一緒に寝てくれない気かい? あのベッドが動かせるものか。だってあれは、地面から生えているんだぞ。私が手ずから、オリーブの老木を壁で囲んで寝室にし、枝葉を落としてベッドの支柱にしたんだぞ。
 その途端、ペネロペはオデュッセウスに抱きついて泣き崩れる。私たちの閨の秘密を知っているあなたは、確かに私の夫です! 

 かくして、夫婦は互いを認め合う。

 To be continued...

 画像は、モンショー「求婚者たちの死骸を片付けるよう侍女たちに命令するオデュッセウス」。
  ニコラ=アンドレ・モンショー(Nicolas-Andre Monsiau, 1754-1837, French)

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