チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

147ヘルツの警鐘/本

2015年12月17日 | 
著者:川瀬七緒(講談社)2012年

今一番ハマっているのがこの作家 川瀬七緒さん。
法医昆虫学捜査官シリーズの第一作目が本書です。

全焼したアパートから発見された焼死体を解剖すると、腹腔から活きた蛆ボールが出てきた。
これは何を意味するのか?
ニクバエは死臭を感知すると10分以内に動物の死体にたどり着き卵を産みつける。
卵はすぐに孵化し、蛆となって死体を食い荒らす。
つまり、焼死体は焼け死んだのではなく、殺された後に焼かれたのだ。
そして、捜査に法医昆虫学が導入されることになる。
虫の知らせが導き出す真相とは?

法医昆虫学者 赤堀涼子が実に魅力的なキャラクターに描かれています。
相棒の岩楯刑事とのほのかな恋のゆくえも気になるところです。
とにかくおもしろく一気に読めます。


ところで、ストーリーとは全く関係がないのですが、本文にこんな部分があります。

 大多数の日本人がそうであったように、赤堀も震災で何かが変わった。けれども、あの衝撃は時間とともに薄れはじめていて、今では、記憶の片隅にひっそりと収納されようとしている。その加速は、どうあがいても止められなかった。
 都会ではきらびやかなイルミネーションが夜を飾っているし、あり余る食べ物が、人々の腹をじゅうぶんに満たしていた。テレビを見て笑い、いつも通りに通勤し、お洒落をしながら誰かに恋をしている狭間で、あいかわらず凶悪な犯罪が起きている。
 結局、何も変ってやしない。すぐ隣で喪失感に喘ぐ人たちがいても、自分たちの生活が壊れなくて本当によかった、と安堵する気持ちは止められないのだと思う。
 自分は冷淡な人間かもしれない。赤堀はそこへいき着いてうろたえた。情には厚いと思っていたのに、現実から目を背けることに躊躇がなかった自分がいるのだ。その気まずさから逃れるために、募金とかボランティアとか、とりあえず聞こえがよいものにあれこれと手をつけた。しかし、全部駄目だ。上辺だけを取り繕ってお茶を濁していることを、自分の中に住み着いている自分に見抜かれている。要するに、自尊心を守ることが、被災地を想うことに通じているかもしれないと、つい最近になって気がついたのだった。


そう東日本大震災後の私たちの気持ちを代弁している。私はそう思った。
こんなことが書けるのは?
やっぱり、川瀬七緒さんは福島県出身でした。
それで一層応援したいと思ってます。
このシリーズ続けてほしいなぁ。

そうそう、もうすぐ最新作「メビウスの守護者」が読めるんです。
図書館の貸し出し順番があと一人。
待ち遠しいなあ~



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