チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第129話 510 Coupe

2007年12月19日 | チエちゃん
ジュンイチさんは、チエちゃんの勤める会社の取引先の営業マンでした。
お茶を出したりするうちに、あいさつを交すようになり、ある時、「よかったら、今度、ハイキングに行きませんか?」と誘われたのでした。
真面目そうな好青年だったので、チエちゃんはその誘いを受けることにしたのです。

 次の日曜日、チエちゃんを迎えに来たジュンイチさんのクルマは、ベージュ色のオンボロ車でした。フェンダーやバンパーの端のほうが錆びています。時々エンジンの掛かりも悪そうです。
「このクルマ、若者にはなかなか人気のある車なんだよ。」という、ジュンイチさんは物を大切に使う人なのかな? それにしても、古すぎない?

 そして、大勢のハイカー達に混じって、ジュンイチさんとチエちゃんは水芭蕉の咲く沼地を目指したのでした。

 うわ~、きれい!水芭蕉が咲いてるとこ、初めて見ました
 来てよかった!

 きれいだろ、、僕、よくここに釣りに来るんだ
 今度、一緒にやってみない? 釣り

 えっ、ええ、、、はい

 チエちゃんが作ったお弁当を二人で食べた後、ジュンイチさんは切り出したのです。
ずっと、チエちゃんのことが好きだったと。付き合って欲しいと。
チエちゃんは、ジュンイチさんの気持ちをうれしく思いました。
こうして、二人のお付き合いが始まったのでした。

 
 それから、二人は、沼に釣りに行ったり、川遊びをして飯盒でご飯を炊いて食べたりと、アウトドアデートを重ねました。
でも、チエちゃんは時々、つまらないと感じることがありました。
ジュンイチさんとは、上手くかみ合わない違和感があったのです。

ジュンイチさんのkissは、やさしいkissでした。
 でも、男はやさしいだけじゃダメなのよ・・・
 時には、激しく、強引でなきゃ・・・・・
そのもどかしく、歯痒い想いをジュンイチさんに伝えるには、チエちゃんはまだ若すぎたのでした。

 その後、チエちゃんがジュンイチさんのオンボロ車を「ブルーバード 510 SSS Coupe」であると知るのは、1年後のことでした。