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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「狗神」

2011-10-04 06:34:54 | 映画の感想(あ行)
 2001年作品。高知県の山奥にある小さな村を舞台に、周囲から忌み嫌われている狗神筋の家系に生まれたヒロインをめぐる因縁話が展開する。坂東眞砂子の同名小説の映画化である。

 原作に出てくる超自然的クリーチャー関係を排除し、作劇を心理サスペンスに振ろうとしているのは、ドキュメンタリー調のリアリズムが身上の原田眞人監督にとっては正解だろう。しかし、それにしてはこれ見よがしのホラー場面の挿入や、理屈に合わない展開が散見されるなど、“脱・超現実的路線”という製作方針が徹底していないのが気になる。

 ラストシーンも説明不足で唐突に過ぎ、釈然としない。主演の天海祐希の演技はまあまあだけど、こういう役柄が合っているのかは疑問である。ただし、全体的に伝奇ドラマとしての雰囲気は出ているので、海外の映画祭ではエキゾティックな風味が評価されるかもしれない(ちなみに、ベルリン国際映画祭に出品されている)。
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「アジョシ」

2011-10-03 06:31:11 | 映画の感想(あ行)

 (英題:The Man From Nowhere)主役のウォンビンを見る映画だろう(笑)。いかにもワケありの態度と容貌で、古いビルの片隅で質屋を営むナゾの男。しかし、暗くてニヒルに思える彼の中にチラチラと年少者に対する心優しい本性が垣間見える。中盤、彼が鍛え上げた上半身を曝しながら鬱陶しい長髪を切り、端正な素顔が露わになるところでは、客席を埋めた韓流ファンのオバさま方のタメ息が聞こえてくるようだ(爆)。

 くだんの質屋は、同じアパートに住む小学生の女の子と親しくなる。彼女には父親はおらず、母親はいかがわしいクラブのダンサーとして生計を立てているようなのだが、そこの従業員の男が取引するドラッグを横取りしたことから、マフィアに狙われるようになる。やがて犯罪組織はこの母娘を誘拐。ナゾの質屋は彼女達を助けようとするが失敗する。それどころか警察に拘束されてしまう。

 当局側はこの男の素性を調べようとするものの、プロフィールが抹消されていることが分かる。実は彼は国家の秘密エージェントだということが明らかになってくるが、彼は容易く警察署を脱出してマフィアに殴り込みを掛ける。

 イ・ジョンボムの演出は中盤までは冗長で、主人公の悲しい過去や敵役の紹介などのくだりが必要以上に引き延ばされている。特に彼が幼い女の子に対して思い入れを持つ理由が示される箇所は、典型的な韓流の泣かせのパターンが前面に出てきてウンザリするのも事実。しかし、主人公がその秘められた力を解放させ、大立ち回りを演じる後半部分になってくるとそれなりに盛り上がってくる。

 映像面でも健闘しており、特に窓をぶち破って敵を追う姿をワンショットで捉えた映像には驚いた。ウォンビンの身体能力はかなりのもので、少々のダメージを負ってもそれを屁とも思わず、派手に悪者退治に専念する姿はアクション映画としての興趣が大きい。もっともそれは特殊工作員としてのスキルを活かした“暴力の過剰行使”でもある。徹底した容赦のなさでスクリーン上が血だらけになり、これではR15になるのも当然だ(苦笑)。

 子役のキム・セロンは実に達者。「冬の小鳥」での演技も良かったが、本作では心に傷を負いながらも必死に主人公を慕う姿が観る者の共感を呼ぶ。それにしても、これだけの大暴れをした主人公は罪に問われないのかどうか気になった。ひょっとして作者は続編も想定しているのではないかと思ってしまう(笑)。
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新製品のスピーカーを試聴してみた。

2011-10-02 06:46:15 | プア・オーディオへの招待
 市内のオーディオショップで新しいスピーカーをまとめて試聴できたので、リポートしたい。

 今回主に聴いたのはデンマークのDynaudio社の製品である。同社は77年に発足。スピーカーシステムだけではなく、ユニットも供給する専門メーカーだ。日本に本格的に紹介されたのは90年代からである。扱っている店は限られるが、独自のポリシーで固定ファンを掴んでいる。私も一目置いているブランドのひとつだ。

 まず聴いたのはコンパクト型のFocus160。実はこれを聴くちょっと前に量販店で英国B&W社の新作PM1を試聴しているのだが、正直言って聴感上のレンジの広がりがそれほどでもないPM1と比べて、実売価格はあまり変わらないFocus160の方が好印象である(まあ、駆動していたアンプはそれぞれ違うので、一概には言えないが ^^;)。シルキーで滑らかな中高域と、目立たないけど「出るべきところはちゃんと出ている」低音。このクラスでは音場展開も大きく、何より清涼かつ適度な温度感を伴った音色は、いくら聴いても疲れない。

 次に聴いたのがディーラー大絶賛の高級コンパクト型スピーカーのConfidence C1 Signature。私も大いに期待していたのだが・・・・。ハッキリ言って音が薄い。確かにFocus160に比べれば音場は(聴感上では)2倍ほどに広がった印象を持ったが、どうにも音像の掴み出し方が単調で甘い。たとえば同じ定価100万円程度のコンパクト型である米国JOSEPH AUDIO社のPULSARAUDIO MACHINA社のCRMなどと比べても、アピール度は低い。



 また、Confidence C1 Signatureは前面の寸法は大したことはないが奥行きがかなりある。しかもバスレフダクト(低音が出てくる穴)が後方に空いており、壁から相当離さないと正常な低域再現性は望めない。最低10畳、生活居住空間を考えると出来れば20畳以上のリスニングルームが必要で、この製品を導入できる家庭は限られるだろう(それ以前に高価格で、一般ピープルにはなかなか手が出ない)。

 しかしながら、以前同じDynaudioのSapphireというフロアスタンディング型の高級スピーカー(定価約200万円)が入荷当初の試聴では最悪だったのに、それから約1年経過した再度の試聴では見違えるように磨かれた音になったように、このConfidence C1 Signatureもエージング(鳴らし込み)が進めば素晴らしい音になるのかもしれない。

 フロアスタンディング型のFocus340も聴いてみた。キャビネットが大きい分低域の再現性に優れ、特に管弦楽曲なんかを聴くとコンパクト型とは一線を画した優位性を見出せる。しかも、量感だけの低音ではなく、締まりもスピード感も確保されている。中高域もスムーズそのもので透明感が高く、多ユニット構成ながら定位感も悪くない。

 斯様にFocus340は誰にでも良さが分かるスピーカーだが、66万円という定価を考えると、他社製品にも良いものがありそうである。このクラスのスピーカーの購入を検討している者は、徹底した試聴・比較が必要になるだろう(まあ、当たり前のことであるが ^^;)。

 最後に聴いたのは独ELAC社の小型スピーカー、310 INDIES BLACKである。高さが20cm程度の、今回試聴したスピーカーの中では一番コンパクトで、かつ最も安価なモデルである(とはいっても本体だけで約20万円。専用スタンドとセットになると25万円ぐらいになるが ^^;)。



 このサイズが信じられないほどの低音の広がり、そしてELACらしい伸びやかな中高域が楽しめる上質なモデルだ。見た目は他のELAC製品と比べてもかなり無骨で、好き嫌いがハッキリと分かれるだろう。しかし、あまり広くないスペースで十分な音場を確保したいユーザーにはもってこいの製品だ。能率も高くて繋ぐアンプをあまり選ばないのも有利な点である。

 オーディオ用スピーカーのブランドは多い。国内メーカーは撤退したところが多いが、その分欧米からヴァラエティに富んだ製品が入ってくるようになった。今回接することの出来たスピーカーは、今年発売される製品のごく一部である。私自身、次回スピーカーを買い換えるのがいつになるか分からないが、あれこれ聴いて更改の計画を練っているときが実は一番面白かったりする(笑)。オーディオの醍醐味のひとつであろう。
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「世界侵略:ロサンゼルス決戦」

2011-10-01 06:44:11 | 映画の感想(さ行)

 (原題:Battle:Los Angeles)絵に描いたようなアメリカ製の国威発揚大作である。もっとも、昔のように対戦相手を旧東側諸国やアラブ人に設定することは都合上出来ない(笑)。だから、ここは“誰も感情移入が出来ない敵”である異星人を侵略者に据え、それに対するアメリカ軍の勇猛果敢ぶりを大々的にアピールさせようという作戦である。

 ナゾの流星群が各大陸の都市部の沿岸に降り注ぐという異常事態が発生。軍はこれを非常時と捉え、各拠点に戦力を集中させる。部下を死地に追いやったトラウマにより退役届を出したばかりの海兵隊の二等軍曹マイケル・ナンツ(アーロン・エッカート)もロスアンジェルスの基地に招集されるが、そこでこの未確認物体の飛来はエイリアンの侵略であることを知る。前線に取り残された民間人を救うため、彼の属する小隊は敵に制圧された地区に乗り込むが、待ちかまえていた異星人達と交戦状態に突入。激烈な地上戦が展開する。

 描き方はリアリティ重視で、ユーモアの挿入やホッと息をつける箇所はほとんどない。全編これドンパチの連続だ。しかも、当初は圧倒的な科学力・軍事力を持つ相手に対して敗走を続けるが、やがて弱点を知って反撃に出るという筋書きは「インデペンデンス・デイ」の二番煎じであり、要するに実に愛想のない映画だと言えるだろう。

 ならば観る価値はないのかというと、そうでもない。こういう単純明快なバトル編は、観客(特に野郎)の琴線に触れることも多々あるのだ。まるでシューティング型のゲームをやるような、一面をクリアしたら難度が少し上がったもう一段上位の面に次々と移っていくみたいな、そういうカタルシスを味わう映画だと思う。

 もっとも、アメリカ人が観れば“絶対に退却しない、頼りになる海兵隊”のイメージを強く印象付けられるのだろう。異星人の目的が水資源であり、現実に世界各地で展開している(戦争の火種にもなる)水争いの暗喩であることも感じさせるが、それは必要以上に表には出ない。

 ジョナサン・リーベスマンの演出は才気走ったところは無いが、腕力だけはあるようで、戦闘シーンを途中ダレずに見せきっている。なお、本作は東日本大震災を配給側が考慮して、当初4月に公開されるはずが約半年延期されたものである。理由は“津波の場面”が短時間挿入されているからとか。大して印象に残っていないし、それだけで公開一時取りやめにするほどのことかと思ってしまう。
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