元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「モテキ」

2011-10-10 06:57:17 | 映画の感想(ま行)

 中盤までは好調だが、後半は腰砕け。これはひとえに“第一ヒロイン”を演じる長澤まさみの資質を見抜けなかった作者の側に責任があるのではないかと思ったりする(笑)。

 主人公の藤本幸世はカネも無ければ夢も無い、冴えない三十男だ。長かった派遣社員時代にようやく幕を引き、ニュース配信会社の正社員になって巻き返しを図るものの、相変わらず女性とは縁がない生活が続く。ところがネット上のやりとりで知り合った雑誌編集者の美由紀を皮切りに、次々と彼に好意を寄せる(ように見える)女達が現れる。これはひょっとして、誰しも人生で一度は経験するという“モテ期”が到来したのではないかと幸世は有頂天になるが、現実は甘くなかった(爆)。

 この美由紀に扮しているのが長澤だが、前半の彼女はお世辞抜きで魅力的だ。主人公をして“殺人的な笑顔”と言わしめるような、愛嬌全開の展開を見せる。しかし、よく考えてみるとこれは“演技”ではなく彼女自身の“地”ではないだろうか。素顔の長澤は美由紀のようなキャラクターであると聞き及んでいるし、何より頑張って演技をしている気配が微塵も感じられないあたり、そう的外れな見解ではないと思う。

 その証拠に、後半は話が入り組んできて当然のことながら彼女に“真っ当な演技”が要求されるシチュエーションに入っていくのだが、そうなると全く精彩を欠いてしまうのだ。

 ただ脚本通りにやりましたというレベルであり、大根ぶりが露呈。ラストなんか、これ以上彼女にやらせておくと盛り下がるばかりだから、適当なところで切り上げようという諦めの気配さえ感じさせる。それに呼応するように、終盤の筋書きも御都合主義的かついい加減に終わり、釈然としない気分で劇場を後にすることになってしまった(呆)。ちゃんとした演技の出来る別の女優を起用して、シナリオも練り直すべきだった。

 しかしながら、観て損のない映画でもある。それは、ポップで軽妙な前半部分があまりにも面白いからだ。この部分における大根仁の演出はテンポが良く、画面作りもカラフルで観ていてウキウキしてくる。ミュージカル場面が挿入されるのも効果的で、特に主役の森山未來がPerfumeのメンバーと公園で歌って踊る場面は、最高に楽しい。日本映画では珍しく、全体的に音楽の使い方が上手いのも特筆すべき点だ。

 主演の森山は快調。身体のキレは良いし、言い訳がましいモノローグの連発も笑える。また“第二ヒロイン”の麻生久美子は好演で、俗に言う“鬱陶しい女”を実に上手く表現している。そして“第三ヒロイン”の仲里依沙は出番は少ないながらもオイシイところを持って行く。まさに快演だ。ただ“第四ヒロイン”の真木よう子のパフォーマンスはどうでもいいようなレベルである。真木は実力があまりないわりには、けっこう映画やテレビに露出している。まあ、その背景には我々があずかり知らぬ“事情”というものがあるのだろう(苦笑)。
コメント
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