元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

高級小型スピーカーを試聴した。

2011-10-15 06:52:50 | プア・オーディオへの招待
 市内のオーディオショップで新しいスピーカーを試聴出来たので、リポートしたい。先日の別の店での試聴会では海外製を主に聴いたが、今回は国産品だ。製品名はKISO ACOUSTIC(キソ・アコースティック)のHB-1である。

 聞き慣れないメーカーであるが、2009年に発足したニューカマーだ。その名の通り、岐阜県に居を構える。HB-1は片手で持てるほどの、軽量でコンパクトな2ウェイモデルである。高音部はホーン型で黒檀の削り出し。低音部の素材はおそらくポリプロピレン系であろう。キャビネットはギター製造で知られる高峰楽器製作所が受け持っており、外装の仕上げは丁寧だ。



 さっそく音を聴いてみると・・・・正直言って、驚いた。

 このサイズからは信じられないほどの、低音の量と音場の広さが体感出来る。目をつぶって聴いていたら大型スピーカーと間違えそうだ。さらに音像は超リアル。ヴォーカルは血が通っており、ヴァイオリンの独奏なんかは、松ヤニが飛んで来そうな臨場感である。

 リスニングルームにステージの奥の奥まで見渡せるような、三次元的な音響空間が再現される。このパフォーマンスは、凄い。

 そして何より印象的だったのは、作り手が“自分の聴きたい音”を突き詰めていったことが分かることだ。国内大手メーカーの、おそらくは周波数測定器などと睨めっこしながらカタログデータを積み上げる姿勢とはまったく違う、ヒアリングのみで追い込んでいったサウンド・デザインが垣間見える。

 しかし、自分がこの製品を買いたいかというと・・・・それは遠慮したい。何よりHB-1はあまりにも高価な商品なのである。ペアで136万円。しかもそれはベーシックモデルであり、カスタムモデルだと200万円にも達する。たとえ手練れのオーディオマニアでも、購入には躊躇するであろう。

 そして肝心の音も、実を言うと私の好みではないのだ。HB-1の生々しいサウンドは、聴いていて疲れる。オーディオというのは生演奏とは違うのだ。自室でヴァイオリンやピアノの強奏を始終至近距離で聴きたいとは思わない。くつろいで聴きたい時や、BGM的に流しておくのには、HB-1は合わない。

 とはいえ、このスピーカーが端倪すべからざる実力を持っているのは確かだ。高額であるのはエンジニア個人の手作りであることが大きいと思う。このノウハウを大手メーカーが採用すれば(まあ、難しいとは思うが)、もっと価格は下げられる。せめて半額ぐらいにしてくれれば、ベストセラーになるだろう。

 今回HB-1よりも興味を持ったのは、これを駆動するアンプである。これも国産の新勢力であるSPECの製品が起用されていた。SPECは2010年に発足したメーカーで、そのモデルは今年(2011年)春のオーディオフェアで聴いたことがある。あの時は独CANTON社のスピーカーをドライヴしていたが、今回のHB-1とのコラボレーションも勘案すると、かなり上質な製品であることが分かる。



 デジタルアンプではあるが、無機的で硬い部分はどこにもなく、それどころかほんのりと温かみさえ感じさせる。しかもフラット傾向で余計な味付けはされていない。デジタルアンプらしい駆動力の高さと省電力性もセールスポイントだ。

 ハイエンドモデルのRSA-F1こそ高額で手を出しづらいが、下位のRSA-M1やRSA-V1はACCUPHASELUXMANといった既存の国産メーカー品と十分タメを張れる競争力を持つ。特に余計な機能が付いていないSPECのモデルには、魅力を感じるマニアも少なくないであろう。私も予算があれば導入したいと思ったほどである。
コメント
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