元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「4人の食卓」

2011-10-09 06:36:52 | 映画の感想(英数)
 (英題:The Uninvited )2003年作品。地下鉄で起きた殺人事件を偶然に目撃してそのトラウマから逃れられず、挙げ句の果ては霊の姿を見るようになった青年と、似たような境遇の若い女がたどる運命を描く、韓国産のホラー編だ。

 エンドマークを迎えても釈然としない“謎”ばかりの映画。ホラーものとしては長い2時間10分の上映時間の中には“思わせぶりだが、実は何でもないネタ”が満載で、それらは監督の頭の中では“完結”している素材なのかもしれないが、ここではプロットを混乱させるだけの不純物でしかない。

 これが長編デビュー作の女流イ・スヨンは“並のホラー映画とは違うものを作ろう!”という気負いだけが空回りし、観客を取り残したままドラマを空中分解させている。起承転結そしてカタルシスという“定石”を無視した作劇がサマになるのはデイヴィッド・リンチみたいな一部の手練れの異才だけだ。彼女のような駆け出しに務まるはずもない。また、ホラー描写を“観る者に不快感を与えること”だと勘違いしているような姿勢もいただけない。

 主演のチョン・ジヒョンは「猟奇的な彼女」とは打って変わった暗い病的なヒロイン像を熱演しているが、他のキャストが弱体気味で、結果として大柄な彼女の姿がスクリーン上で所在なげに佇むだけになってしまった。

 不協和音を主体にしたBGMやモノクロに近いシネマスコープの映像も作者の独りよがりを強調するのみ。作品の方向性を掴まないまま新人監督に好き勝手やらせてしまった製作者の責任も大きいだろう。
コメント
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