元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「仁義なき戦い 代理戦争」

2022-08-19 05:13:50 | 映画の感想(さ行)
 73年東映作品。人気シリーズの第三作だが、実質的には同年初頭に公開された第一作の続編に当たる。正直言ってプロットはパート1よりも複雑で、分かりやすい映画とは言えない。だが、尋常ではない熱量の高さと濃すぎるキャスティングにより、見応えのあるシャシンに仕上がっている。この頃の邦画のプログラム・ピクチュアは、まだまだ勢いがあったと思わせる。

 昭和35年4月、広島市随一の規模を誇る暴力団である村岡組のナンバー1が、他の組とのトラブルで殺されてしまう。ところが村岡組傘下の有力者である打本昇は、この事態の収拾に及び腰だったため、たちまち村岡組の跡目争いが勃発する。一方、同系列の山守組を預かる山守義雄も村岡組の後継争いに参画。人望がある広能昌三を強引に山守組傘下に復縁させ、打本らを説き伏せて山守への権限委譲が成立したかに見えた。



 ところが打本が別件のいざこざにより神戸の広域暴力団である明石組に助けを求めたことから、状況は一変する。山守は明石組に対処するため、同じ神戸の神和会との縁組みを企む。かくして、関西の大手組織同士の代理戦争が広島で大々的に展開することになる。

 概要だけ見れば広島を舞台にした関西の二大暴力団の覇権争いなのだが、広島の地元勢力も明確に2つに分かれてはおらず、それぞれの事情によって場当たり的に所属派閥を変える。それこそ“仁義なき戦い”なのだが、すべてが欲得ずくで動いているわけではなく、昔ながらの義理と人情も完全には廃れていない。それが本作においてストーリーを追うことを難しくしている証左でもあるのだが、言い換えれば実際は部外者が思うほど事は単純ではなく、複雑な離合集散が延々と描かれているのは現実に近いのかもしれない。

 監督はお馴染みの深作欣二で、熱量の大きいヤクザ群像を骨太のタッチで描ききっている。しかも、この密度の高さを実現していながら1時間40分ほどの尺に収めているのは、まさに職人芸だ。

 そして何よりキャスティングの充実ぶりは圧倒的。狂言回しの広能に扮した菅原文太をはじめ、川谷拓三に渡瀬恒彦、金子信雄、田中邦衛、成田三樹夫、山城新伍、加藤武、室田日出男、丹波哲郎、梅宮辰夫と、それぞれが出てくるだけでスクリーンを独占してしまうような存在感の持ち主で、また彼らがもういないことを考え合わせると、切ない気持ちでいっぱいになる。残念ながら、今の邦画界には本作の出演陣のようなスター性とアクの強さを兼ね備えた濃い面子はほとんど存在しない。そういった観点からも、日本映画の将来は明るいものではないことを、改めて思う。

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