元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バービー」

2023-09-03 06:10:21 | 映画の感想(は行)
 (原題:BARBIE)バービー人形自体がもともと子供向けの玩具である関係上、この映画も子供を対象にしていると思って良い。ただし、私のこの見解には異論がありそうで、大方の評価は“ジェンダー問題などに切り込んだ社会派テイストのシャシン”といったものだろう。しかし、玩具をネタにそういう御大層な題材を扱う必要があるとは、個人的には思えない。深く突っ込むのならば、別の方法があったはずだ。

 バービーとその仲間の人形たちが暮らす“バービーランド”は、ピンクに彩られた世界で毎日がパーティ。何の問題も無い日々が永遠に続くと誰もが信じていたが、ある時スタンダードモデルのバービーの身体に異変が起きる。外の世界を知る“変てこバービー”に相談すると、現実世界のバービー人形の持ち主である女の子の問題を解決すれば、元に戻れる可能性があると聞かされる。そこで彼女は、勝手についてきたケンと一緒に人間が暮らす現実の世界へ赴く。



 要は人間世界の不安がバービーの住むエリアに悪影響を与えていたということで、その最たるものがケンが目の当たりにするマッチョな家父長制だ。男性優位主義に目覚めたケンは“バービーランド”に戻り皆を啓蒙。すると瞬く間に“バービーランド”が前時代的な様相に変わってしまう。これは大変だと、バービーたちは奮闘するのだが、何やらマッチョイムズとフェミニズムが単純二項対立のごとく配置されている案配で、これは底が浅いと思う。

 また、アランという中立的なキャラクターを登場させるのも安易に過ぎる。だが、本作が子供向けの紙芝居のような位置付けならば納得できよう。深読みして無理矢理持ち上げる必要は無い。グレタ・ガーウィグは監督として「レディ・バード」(2017年)や「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(2019年)を手掛けているが、それらに共通する煮え切らない空気が本作にも充満している。

 舞台造形やファッション可愛いという意見があるが、個人的にはそれほどのインパクトは受けず。マーゴット・ロビーにライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ、ケイト・マッキノン、ヘレン・ミレンなどのキャストは頑張っているが、どうも印象が薄い。しかしながら、あえて長所を探してみると、子供向けらしくセリフが平易で、これなら字幕なしでも8割方は理解できる。英語の教材としてはもってこいだ。

 そしてサントラ盤は実に豪華。出演もしているデュア・リパをはじめ、リゾ、ニッキー・ミナージュ&アイス・スパイス、チャーリーXCX、エイバ・マックス、テーム・インパラ、サム・スミスらが新曲を提供しており、この手のサウンドが好きならば買う価値はある。

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