元・副会長のCinema Days

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「ソウルメイト」

2024-03-18 06:30:28 | 映画の感想(さ行)
 (英題:SOULMATE)映画向きのネタではないと思った。これはテレビの連続ドラマに仕立てた方が良い。特に後半のアクロバティックな展開は、テレビ画面で眺めていれば“やっぱり韓流ドラマだからなァ”と納得出来る余地がある。だが、一本の映画の中に収めてしまうと違和感ばかりが先行してしまう。序盤が悪くないだけに残念だ。

 済州島に暮らす女子ミソとハウンは、共に絵を描くのが好きな小学生からの大親友。だが、十代の頃に知り合った男子生徒ジヌの存在は、2人の仲に亀裂を生じさせてしまう。疎遠になって16年もの時間が経過したある日、ハウンはミソにある秘密を残して消息を絶ってしまう。香港のデレク・ツァン監督が2016年に手がけた「ソウルメイト 七月と安生」(私は未見)の韓国版リメイクだ。



 絵画のスキルを高めつつ世界中を見て回りたいという夢を持つミソと、何より堅実な人生を送ることに価値を見出すハウン。2人は対照的なタイプだが、子供の頃からウマが合う。この友情を違和感なく描出している前半は悪くない。ジヌをめぐるやり取りも、平凡なラブコメ劇に堕することなくリアルかつハートウォーミングに仕上げている。ところが、大人になった彼らが織りなす複雑すぎる生き方は、あまりにも強引な作劇で戸惑うばかり。

 そもそも冒頭の、絵画展で入選した作品の作者が見つからないというシークエンスの存在自体が間違いだったのではないか。ここに無理矢理に帰着させるために、牽強附会の極みのようなストーリーを用意するハメになったとも言える。繰り返すが、この建て付けは連続韓流ドラマだったら許されるし、たとえ批判が出ても“ディレクターが交代した”の何だのという言い訳が通用するのかもしれない(苦笑)。しかし、映画の中でやってはダメだ。もっと自然な筋書きを提示する必要があった。ミン・ヨングンの演出も、映画が進むにつれ煽情的なタッチが目について愉快になれない。

 とはいえ、主演のキム・ダミとチョン・ソニのパフォーマンスはかなり良好だ。けっこう幅広い年齢を演じているのだが、違和感が無い。ジヌに扮するピョン・ウソクも上手く役柄をこなしている。また、カン・グヒョンのカメラによる済州島の風景はとても魅力的だ。なお、オリジナルの「ソウルメイト 七月と安生」は本作とは設定がかなり違うようで、機会があればチェックしてみたい。

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