元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「映画 からかい上手の高木さん」

2024-07-01 06:25:52 | 映画の感想(あ行)
 人気コミックの実写映画化によるラブコメ作品という、普段ならば絶対に私の鑑賞対象にならないタイプのシャシンなのだが(笑)、それでも映画館まで足を運んで観ようと思ったのは、監督が今泉力哉であったからに他ならない。結果、ほぼ満足出来るような内容であったのには安心した。もっとも、細かいところまで突っ込むとアラは見えるのだが、それを余裕でカバーできるだけの“愛嬌”がこの映画にはある。

 瀬戸内海に浮かぶ島の中学校で体育教師を務める西片の前に突然現われたのは、教育実習生の高木だった。実はこの2人は中学生時代には“縁浅からぬ仲”だったのだが、高木がパリに美術留学するため島を離れて以来、約10年間も会っていなかったのだ。相変わらず奔放な性格で西片への“からかい”に興じる高木だったが、互いを憎からず思う感情は昔と変わらなかった。山本崇一朗のコミックの映画化だが、本作で描かれた時制のエピソードは原作には存在しないらしい。



 若者の恋愛沙汰における微妙な哀歓を描かせると、今泉監督は無類の強さを発揮する。主人公たちはすでに大人なので、十代の頃の“からかい”と、今の状況における関係性は違うということは分かっている。ところが、そう簡単に吹っ切れないのも男女の仲なのだ。昔の“からかい”が現時点でどの程度反映されているのかを、2人が互いに手探りで見極めようとしているあたりが面白い。

 しかも、それを直ちにストレートに確認出来るほど、彼らは酸いも甘いも噛み分けたような年代には達していない。この微妙なさじ加減が、ドラマを味わい深いものにしている。もっとも、西片が年齢の割には奥手だったり、主人公たちのかつての担任で今は教頭をやっている田辺が西片を子供扱いしているのは無理がある。また、西片の周囲の人間たち(元同級生)の描き方が通り一遍であるのも不満だし、時制が飛んだエピローグも余計だろう。

 とはいえ、舞台になる小豆島の痺れるほどに美しい風景と大間々昂による効果的な音楽をバックに物語が展開されると、あまり気にならなくなる。高木に扮する永野芽郁は柔らかい雰囲気を前面に出した妙演で、この若い女優の存在感を改めて確認した。西片役の高橋文哉は私は初めて見たが、嫌みの無い好漢ぶりで、作品のタッチによく似合っている。

 鈴木仁に平祐奈、前田旺志郎、志田彩良、白鳥玉季、そして江口洋介といった脇のキャストも悪くない。中学生時代の主人公たちを演じた月島琉衣と黒川想矢のパフォーマンスも万全だ。また、Aimerが歌うエンディングテーマがめっぽう良い。

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