元・副会長のCinema Days

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「ハート・オブ・ザ・ハンター」

2024-06-01 06:27:02 | 映画の感想(は行)
 (原題:HEART OF THE HUNTER )2024年3月よりNetflixから配信。アクション映画としては凡庸な出来。思い切った仕掛けは無いし、展開もスムーズとは言えない。キャラクター設定が良好とも思えず、そもそも物語の背景が不明確だ。それでも何とか最後まで付き合えたのは、本作が南アフリカ映画だからである。欧米やアジアのシャシンとは明らかに違う得体の知れない空気が全編にわたって漂っており、それがダークな内容に妙にマッチしている。配信される映画の中にはこういうユニークな佇まいのものがあるので、チェックは欠かせない。

 かつては凄腕のヒットマンとして裏社会では知られていたズコ・クマロは、今では足を洗って妻子と共にケープタウンの下町で暮らしていた。そんなある日、彼の“上司”であったジョニー・クラインが突然訪ねてくる。彼は、大統領の座を狙っている副大統領のムティマを“排除”するように依頼する。



 ムティマは横暴でスキャンダルだらけの男であり、そんな奴が国家元首になっては国益を毀損するというのだ。ズコは断るが、その後ムティマが仕向けたPIAという国家情報機関によってジョニーは消されてしまい、スゴも狙われるようになる。ズコは妻子を気遣いつつも、ムティマとその一派に戦いを挑む。

 ズコが手練れの仕事人だったのは分かるが、過去にどういうポジションにいたのか分からない。PIAの幹部が女性ばかりというのは奇妙で、その中にズコの仲間も紛れ込んでいるという設定も無理筋だ。アクション場面は大したことがなく、作劇のテンポもスピード感を欠く。さらには敵方の連中が完全武装しているにも関わらず、ズコは槍一本で戦うというのは脱力ものだ。

 しかし、風光明媚なケープタウンが舞台であっても貧富の差の激しさによる暗い雰囲気は拭いきれず、郊外に出れば荒涼とした大地が広がるばかり。この殺伐としたロケーションが、主人公たちの首尾一貫しない言動に妙なリアリティを与えている。さらには、内陸国家のレソトにズコが一時身を寄せるシークエンスの、異世界のような光景は印象深い。

 マンドラカイセ・W・デューベの演出には特筆できるものは無いが、何とかラストまでドラマを引っ張っている。主演のボンコ・コーザは面構えと体格は活劇向きで、演技も悪くない。コニー・ファーガソンにティム・セロン、マササ・ムバンゲニ、ボレン・モゴッツィ、ワンダ・バンダ、ピーター・バトラーといったキャストは馴染みは無いが、パフォーマンスは及第点に達していると思う。

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