気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人5月号 初夏のプロムナード

2012-05-02 23:43:37 | 短歌人同人のうた
かたはらに香る二枝そへられて旅立ちてより白梅は供花

白妙にけぶれる梅を遠く見てひかりのなかを歩みゐたりつ

(青輝 翼  梅香)

切りきざみ切りきざみしろき紙ふぶきつくりて過ぎてゆく一生よし

まどろみにちからの抜けてゆきしときてのひらの上の本はばたけり

(内山晶太  蛍のからだ)

蝋燭の炎が重い。日本はむろんフクシマ切り離せぬゆえ

津波よりのちの沖鳴りお前など死んでしまえという声がする

(生沼義朗  死んでしまえという声が)

たはやすく人を信じてこはれたる人を憐れみかつ羨しびぬ

この白くにごれる水を牛乳と信じて今朝もつめたきを飲む

(伊波虎英  春を待つ)

失ひし物の由来を語るとき越し方春は遠のきてゆく

川に添ふ乞食ならず生きのびてこの世に二度の大震災に遭ふ

(大和類子  ひととせ)

曖昧な微笑みなんぞ浮かべたる妻とはつまりつまらないもの

甘やかなこころ送りし指先で鰯の丸干しなど食みており

(鶴田伊津  ガムラン)

七十歳の老婆といへる言葉さへ春のひざしの中にあかるし

奈良岡朋子の微笑のやうに咲き出だす都忘れのうすき紫

(高田流子  春日通信)

この冬のさんかんしをんやはらかに柳けぶれる岸の辺に来つ

みちのくにまた春が来る東京を養ひ呉れし東北の春

(渡英子  草木山河)

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初夏のプロムナードより。前半。