気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-05-21 20:22:59 | 朝日歌壇
われが死に近づきゆくのか死がわれに近づき来るのか五月の新緑
(三島市 渕野里子)

手さぐりで部屋の明かりを灯すとき触れた水仙の香が立ち上る
(埼玉県 堀口敦子)

青梅を太らす木洩れ日窓に入るひっそり乾く木の俎板は
(東京都 長谷川瞳)

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一首目。五月の明るさのなか、ふと思う自らの死のこと。塚本邦雄の「はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる」を思い出す。結句、「五月新緑」とすると、より引き締まるのではないだろうか。
二首目。ドラマ性があり、嗅覚に訴えるいい歌だと思う。実感が伝わる。
三首目。青梅、木の俎板という道具立てがいい。ちょっとレトロな感じがする。