気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-05-06 23:34:39 | 朝日歌壇
教室の窓より逃げる天才の啄木偲び草に寝ころぶ
(岩手県 山内義廣)

小駅には小駅の好きな燕来て去年の古巣を繕ひてゐる
(金沢市 前川久宜)

ネクタイを剣(つるぎ)のやうに胸に置きまだあどけなさ残りゐる貌
(鶴ケ島市 渡辺隆)

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一首目。今年は石川啄木没後百年にあたる。四月十三日は命日。
「不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心」の歌を下敷きにしているのだろう。
二首目。特に目立つ歌ではないが、味わいがあって佳品だと思う。燕だけでなく人間にも好みの場所があり、そこを大切にするのが幸せなのかもしれない。声高に言うことでもないが・・・。
三首目。ネクタイを締めているのは制服を着た中学生か高校生、それとも就活中の学生だろうか。あどけない顔をしていても剣を持って?戦わなければならない。作者の親心を感じた。「貌」という字も子供から大人になる雰囲気を出していていいと思う。