気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2007-07-23 23:10:51 | 朝日歌壇
難聴は掃射の日よりと答えれば医師はカルテに運命と書く
(台湾 黄得龍)

残年を思わず買いたきものは買う夏の麻地の座布団カバー
(新居浜市 山田志慧子)

わが脳の機能まるごと預け入れぱたりとぱそこん閉ざす射干玉(ぬばたま)
(フランス 松浦のぶこ)

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一首目。台湾の方の歌。短歌人会の夏の集会で台湾へ行ったのは、もう三年前。台湾には短歌を愛好する方がたくさんおられて、日本語も正確でうまい。交流歌会も持った。技巧に走らず、まっすぐに人の心を打つ作品を作られる。
この歌も、一読意味がしっかり伝わる。作者の難聴の原因を理解し、運命と書く医師のエスプリに感心する。それを見逃さず短歌にした作者にも。
二首目。年を重ねて、物が増えすぎると後始末に困るので、買い控えるようになるのだろう。しかし、残りの年がどうであれ、欲しいものは欲しい。残りが少ないと思えばこそ、気に入ったものを使って、快適に暮らしたい。それにしても残年というのは、さびしい言葉だ。
三首目。パソコンで調べればいいと思いはじめると、人間は自前でモノを考えなくなるのだろうか。四句目の「ぱたりとぱそこん」の全部ひらがななのが面白い。そしてそれを閉ざすと射場玉の闇である。結句が意表をついている。



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2 コメント

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Unknown (あづまはや)
2007-07-25 09:36:28
私の選んだ「『朝日歌壇』今週の一首
 
きょう君のB面ちらと見たようなやや罪深きコンタクト外す     (京都市)敷田八千代

 作中の「君」なる人物はおそらく男性。作者が未婚女性だったらその恋人、既婚女性だったらその配偶者だろうか。
 それにしても、その作中男性の「B面」とはなんだろうか。それを推測する手掛かりは下の句に在るのだろう。
 作中主体の目から外された「コンタクト」は何を見たのだろうか。何を見てしまったから「やや罪深い」のだろうか。想像はさまざまに馳せ回って果てしない。
 普段は恋人にも妻にも覗かせない、一男性の裏の顔を、レコードの「B面」に例えたのは秀逸。
 レコードがコンパクトディスクに変わったのに伴って、この世の中から「B面」という、陰りがあって魅力的な言葉が半ば消えてしまった。
 しかし、音を奏でるだけの道具よりは少しばかり複雑な人間どもは、男性も女性も相変わらず「A面」と「B面」を所有している。
 私たち読者に、近藤さんがご自作を通じて覗かせて下さるお顔は、「A面」ですか。「B面」ですか。
 
 
 
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Unknown (かすみ)
2007-07-25 19:10:42
あづまはやさん こんばんは。

歌に出しているのは、一体何でしょうね。いろいろな面があって、なんともいえません。歌ならなんにでもなれる・・・というのも歌を作る魅力です。
あとになって、自分にはこんな顔もあったと思うことがありますよ。
ま、冷えた素麺でもお食べやす。
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