気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人5月号 同人のうた その3

2014-05-18 16:23:06 | 短歌人同人のうた
応接間のソファーにふかくしずみこみこどものままでだれもゐられぬ
(澤志帆)

二・三日葉ぼたん雪に埋もれて丸彦質屋にひとかげはなし
(岡田経子)

残業に疲れて灯すテレビには犠牲らしく踊る少女ら
(八木博信)

ゆふばえの野をつらなりてゆく貨車のまぼろしが見ゆ紅茶の底に
(金沢早苗)

鍔広の帽子に白いワンピースふりむかないでなよたけの人
(𠮷岡生夫)

うつしみを離れて今はかろがろとおちこちに行く母の御魂は
(長谷川富市)

ミノルタのコピー機荒れて走りしは三年前のあの日あの時
(橘圀臣)

キャラメルの紙を小さくたたみをり些事のひとつに攫はれながら
(紺野裕子)

明らかによくないことと知りながらすがるがごとく煙草に火つく
(小池光)

「ああ」と言はれ「あら」と答へて久闊をわびてゐるなり改札口に
(斎藤典子)

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短歌人5月号、同人1欄より。